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    「加藤合同国際特許事務所~知財とびうめ便り~」 Vol.99

   発信日:2024年 11月 1日   発信者:加藤合同国際特許事務所
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◇ 目 次 ◇

1.弁理士コラム
  ◆昨今の特許権侵害訴訟について

2.知財ニュース
  ◆キヤノン、商標権侵害で米国の模倣品販売業者を提起

3.連載 知財講座
  ◆第99回:商標「分割納付」

4.所員ほのぼの日記
  ◆秋の旬 柿

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 1.弁理士コラム
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◆昨今の特許権侵害訴訟について

 ちょうど2年前(2022年11月号)の弁理士コラムで、日本製紙グループの日本製紙クレシアが、大王製紙に対して同社製品の販売差し止めおよび損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴したというニュースを紹介しました。
 
 あれから2年以上が経過し、東京地方裁判所は今年の8月に、原告の請求を棄却する判決を下しました。要するに、大王製紙による特許権侵害は認められない旨の判決が下されたわけですが、原告である日本製紙クレシア側が控訴の姿勢を見せているため、今後もこの事件の行く末に目が離せないところです。

 また、ここ最近は、ゲーム業界に関する大きな特許権侵害訴訟のニュースが飛び込んできています。例えば、9月中旬には任天堂と株式会社ポケモンが共同で、「パルワールド」の制作会社である株式会社ポケットペアに対して、特許権侵害訴訟を東京地方裁判所に提起したようです。また、同じく9月末には、セガサミーホールディングスのグループ会社であるセガが、「メメントモリ」の制作会社である株式会社バンク・オブ・イノベーションに対して、特許権侵害差止等請求訴訟を東京地方裁判所に提起したようです。

 私は就職してからはめっきりゲームをプレイする機会も少なくなったため、残念ながらどちらも実際にプレイしたことはないのですが、「パルワールド」も「メメントモリ」も非常に人気のあるゲームです。アクティブユーザー数も多いため、訴訟がどのような結果になったとしても、多くのユーザーのためにサービスを継続させていく対応が必要になるのではと思われます。

 なお、ゲーム業界に関してですが、新型コロナウィルスの影響か2020年頃から急激に需要が増え始め、最近ではeスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)も一般的なものとなってきました。また、eスポーツの配信も積極的に行われており、私は特にSFL(ストリートファイターリーグ)を毎年観戦しています。
 
 SFLは、CAPCOMの代表的なゲームシリーズであるストリートファイター(今は「ストリートファイター6」)を利用した公式チームリーグ戦なのですが、企業12社がチームオーナーとなって、4人1組のチームで対戦する形式となっています。九州の企業だと、(本社は東京ですが)再春館システム株式会社がオーナーとなっているチーム(※)もあります。
(※)Saishunkan Sol 熊本。レジェンドプレーヤーであるウメハラも所属しており、私は昔埼玉のゲームセンターで、ウメハラからサインを貰ったことがあります。

 このような、今後もニーズや人気が高まり続けると予想されるゲーム業界において、画期的なアイデア(発明)は特許として保護されつつも、他社の技術を尊重し、悪質な模倣のない、全員が楽しめる世界が続いていければと、一ファンとして強く思うところです。

 弁理士 宇野 智也


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 2.知財ニュース
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◆キヤノン、商標権侵害で米国の模倣品販売業者を提起

 キヤノンは10月3日、アマゾンと共同で、商標「Canon」の権利を侵害しているとして、米国のアマゾンストアでキヤノン製のトナーカートリッジの模倣品を販売していたとみられる販売業者(18セラー)に対し、ワシントン州西部地区連邦地方裁判所に訴訟を提起したと発表しました。

 キヤノンは2023年にもアマゾンと共同で、キヤノン製のカメラ用バッテリーと充電器の模倣品を販売したとされる販売業者に対して訴訟を提起しています。キヤノンは「危険を伴う可能性のある模倣品の被害から顧客を守れるよう、模倣品販売者に厳正に対処する」としています。

 近年、電子商取引(EC)市場の飛躍的成長に伴い、ECサイト上の模倣品被害が増加しおり、この問題に対して、キヤノンとアマゾンは協力して模倣品販売者への対抗措置実施とお客さまの保護に努めているとのことです。

 今回の共同訴訟もこの協力関係の一環で提起したものとなります。


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 3.連載 知財講座
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◆第99回:商標「分割納付」

 商標は、登録の日から10年間が権利の有効期間となりますが、特許や意匠とは異なり、10年ごとに更新の申請手続きを行うことで永続的に権利を維持することができます。明治35年に登録された現在も有効な商標権も存在します(商標登録第1655号)。

 このように、維持していく程のブランド価値が無くなったと判断しない限り、永く権利を維持できる一方で、短期の事業や立ち上げたばかりの事業のように、10年間の維持が必要か不明な場合もあると思います。商標法では、そのような状況を考慮した分割納付という制度があります。
 分割納付ができるのは、登録査定による登録料の納付と、更新期間における更新登録料の納付です。前期5年分と後期5年分の2回に分けることができます。

 分割納付のメリットは、商標を短期間のみ使用する場合のコストです。一度納付した登録料は返還されませんので、10年分の登録料を納付した後、すぐに商標を使用しなくなると、残りの期間分が無駄になってしまう可能性があります。
 但し、デメリットとして、前期5年分と後期5年分の2回に分けて10年分を納付すると、10年分を一括で納付するより割高となります。また、通常は10年毎に更新すれば済むところ、後期5年分の納付手続きを挟むため、期限管理が煩雑になってしまいます。

 なお、分割納付をすると、商標権の存続期間満了日の5年前までに後期5年分を納付しなければ、後期5年分の納付期日(権利満了日の5年前)をもって権利が消滅したものとみなされますのでご注意ください。

 2024年11月時点の一括納付と分割納付の登録料は以下の通りです。

<(登録査定による)設定登録料>
 10年間の一括納付:区分の数×32,900円
 5年間毎の分割納付:区分の数×17,200円(前期・後期とも)
  ※2022年3月31日以前に前期分を納付した場合、後期分の登録料は前期分と同額(区分の数×16,400円)になります。

<(更新期間における)更新登録料>
 10年間の一括納付:区分の数×43,600円
 5年間毎の分割納付:区分の数×22,800円(前期・後期とも)
  ※2022年3月31日以前に前期分を納付した場合、後期分の登録料は前期分と同額(区分の数×22,600円)になります。

 法改正を経て、10年分を一括納付する場合と5年分ずつ2回に分けて納付する場合の差額は以前より狭まっています。商標登録をご検討の際は、この分割納付も考慮していただければと思います。


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 4.所員ほのぼの日記
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◆秋の旬 柿

 秋は、夏の太陽の恵みを受けて、美味しいものがたくさん実ります。柿、なし、ブドウ、栗、新米、サツマイモ、イチジク、銀杏などなどです。

 子供のころ、近所の庭に大きな柿の木があり、毎年秋にはたくさんの柿が実り、いつもお裾分けで頂き、頂いた柿に丸ごとかぶりつき、柿の美味しさを味わっていたせいで、いつの間にか大好物な果物となりました。

 そのようなこともあり、今から約7年前、たまたま立ち寄ったお店で、柿の苗木が目に入り、衝動買いです。小さな庭の土に相性が良かったのか、すくすくと育ち、4年後には驚くことに4個程度の実をつけました。赤く熟した実を枝からもぎ取り、ガブリと一口。芳醇な香りと程よい甘さが口の中に広がりました。それから年々実りが増え、去年は13個程度の実がなりました。

 今年も春の終わりごろには、青々した小さな実が20個以上なり、今年は職場の皆さまにお裾分けできそうと思っていましたが、そううまくいきませんでした。梅雨時期の長雨のあとの頃から、びっくり。なんと青い実が徐々に地面に落ち始め、残ったのが、わずか5個程度になってしまったのです。わけがわかりませんが、まったく残念。

 今年は、10月の末になっても、実がなかなか赤く染まりません。多分、今までの気温が高かったせいだと思います。食べごろは、11月中旬以降になりそうです。来年は、栄養を与えるなどして、ぜひ20個以上の赤い実がなるようにしたいと思っています。

 柿には、皮膚や粘膜の健康維持を助けてくれる「βカロテン」や二日酔いを和らげてくれる「タンニン」など多くの栄養が含まれ、特にビタミンCはみかんより多く含まれており、体調管理や美容を意識する人にもおすすめとのことです。皆さまも今旬の柿をぜひどうぞ。