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「加藤合同国際特許事務所~知財とびうめ便り~」 Vol.96
発信日:2024年 5月 1日 発信者:加藤合同国際特許事務所
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◇ 目 次 ◇
1.弁理士コラム
◆AIと発明・発見について
2.知財ニュース
◆ラコステが「ワニロゴ」商標権侵害訴訟で勝訴、賠償金約3億円
3.連載 知財講座
◆第96回:商標「他人の氏名を含む商標」
4.事務所からのお知らせ
◆特許庁の海外出願支援事業について
◆「東経ビジネス」九州版 2024春号に掲載していただきました
5.所員ほのぼの日記
◆ツール・ド・九州
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1.弁理士コラム
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◆AIと発明・発見について
最近のAIの進展は驚くばかりです。AIチャットの普及は人事・総務・経理などの対応業務の効率化に大きく貢献しつつあり、一方で、ロシアとウクライナの戦争ではAIを搭載したドローンが従来の戦闘を劇的に変化させつつあります。
このようなAIの進化は、2045年には到来するとされている「シンギュラリティ(技術的特異点)」、即ち、AIが人間を超える知能を持つ転換期として問題とされています。実際には、本当にシンギュラリティがくるのかどうか、またそのような世界はどのようなものか誰にも分からない未知の世界ということのようです。
ところで、進化したAIは、人間のように発明・発見が可能なのでしょうか?
偉大な発明・発見に至るには、大きく二つのルートがあるといわれています。
(1)既存の要素の組み合わせによるものと、(2)セレンディピティ(Serendipity)によるものです。
前者には、ニュートンの万有引力の法則の発見が挙げられます。ニュートンは、ケプラーの法則に基づき万有引力を発見しました。彼の著名な言葉である「私がほかの人より遠くを見ることが可能だったのは、私が巨人の肩に立ったからである。」が、そのことを物語っているともいえます。また、ワットの蒸気機関も、既存のニューコメン蒸気機関の分析の結果に基づき発明されたもので前者に属すると思われます。
一方、後者のセレンディピティは、「偶然による科学上の発見、偶然幸運に出会う能力」といわれており、世界的な発明・発見はこのセレンディピティによるものが少なくありません。
その代表ともいえるのは、フレミングによるペニシリンの発見です。彼は、ブドウ球菌をシャーレで培養中に夏季休暇で実験を放置し、休暇後戻った実験室でアオカビによる菌コロニーの破壊を見て抗生物質の発見をしたとされています。
その他、レントゲンによるX線の発見(真空管の陰極線の実験中に部屋を暗くした)、ICI 社のポリエチレンの発見(超高圧の実験中に微量の酸素が混入)、グッドイヤーのゴム加硫法の発見(硫黄と混ぜたゴムのかけらをストーブの上にうっかり落とした)、白川英樹の導電性ポリマーの発見(アセチレンの重合時に触媒濃度を間違えた)、田中耕一のタンパク分子の質量分析法の発見(熱エネルギー緩衝材としてグリセロールとコバルトからなるマトリックス材を誤って作り、捨てるのがもったいないとして実験してみた)等が挙げられます。
そうすると(1)にかかる発明は、深層学習(DL)等により進化したAIにも可能になるのではと思えてくるのですが、一方で、(2)にかかる発明については、偶然や失敗に基づくことからAIには不可能ではないかと勝手に得心しているところです。
しかし、AIがシンギュラリティ後に更なる進歩を遂げ、(2)のセレンディピティによる発明や発見をもするに至れば、機械が人間を支配する、所謂“ターミネーター”の時代が現実のものになるかもしれません・・・・。
弁理士 久保山 隆
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2.知財ニュース
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◆ラコステが「ワニロゴ」商標権侵害訴訟で勝訴、賠償金約3億円
4月初旬、「ラコステ(LACOSTE)」が、商標権侵害訴訟で中国のアパレルブランド「カルテロ(Cartelo)」に勝訴したと中国メディアなどが報じました。
1933年にフランスで創業したラコステは、日本を含め世界各国に支社を置く世界的なアパレル総合ブランドメーカーで、緑色のワニの商標(ロゴマーク)で有名です。
カルテロは、ラコステ同様にブランドロゴとしてワニのマークを使用していますが、主な違いはワニが左を向いているラコステに対し、カルテロのロゴマークは右を向いている点にあります。
報道によると、今回の判決で裁判所(北京高級人民法院)は、ラコステへの商標権侵害を認め、カルテロに賠償金として205万ドル(約3億1324万円)の支払いのほか、ロゴを使用した商品の販売停止を命じました。
しかし、カルテロは現在も該当商品の販売を継続しているとのことです。
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3.連載 知財講座
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◆第96回:商標「他人の氏名を含む商標」
2023年6月14日に公布(施行日2024年4月1日)された改正商標法により、他人の氏名を含む商標の登録要件が緩和されることになりました。
商標法には、他人の氏名を含む商標は、その他人の承諾がないと商標登録できないとの規定があり(商標法第4条第1号第8号)、従来の制度では、知名度等にかかわらず、同姓同名の他人がいた場合、その全員の承諾を得なければ商標登録を受けることができませんでした。
今回の改正により、商標に含まれる氏名と同姓同名の他人が存在したとしても、一定の知名度がなければ(商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名でなければ)承諾が不要となります。なお、登録が認められるためには、下記2つの政令要件も満たす必要があります。
(1)商標に含まれる他人の氏名と商標登録出願人との間に相当の関連性があること。
例えば、出願商標に含まれる他人の氏名が、出願人の自己氏名、創業者や代表者の氏名、出願前から継続的に使用している店名等である場合は、相当の関連性があると判断されます。
(2)商標登録出願人が不正の目的で商標登録を受けようとするものでないこと。
例えば、他人への嫌がらせの目的や先取りして商標を買い取らせる目的が、公開されている情報や情報提供等により得られた資料から認められる場合は、不正の目的があると判断されます。
本改正は、令和6年4月1日以後にした商標登録出願に対して適用されることになります。
特に創業者やデザイナー等の氏名をブランド名に採用することの多いファッション業界の方々にとっては朗報と言えるのではないでしょうか。
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4.事務所からのお知らせ
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◆特許庁の海外出願支援事業について
特許庁が毎年行っている中小企業に対する海外出願支援事業について、令和6年度の事業の概要が公表されましたので、お知らせいたします。
≪支援対象≫
・中小企業者又は中小企業者で構成されるグループ(みなし大企業を除く。)
・地域団体商標の外国出願については商工会議所、商工会、NPO法人等
≪支援要件≫
以下の(1)~(4)を満たすこと。
(1)応募時に日本国特許庁に出願済みであり、採択後に同内容の出願を優先権を主張して外国へ年度内に出願を行う予定の案件。
(2)先行技術調査等の結果からみて、外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないこと。
(3)外国で権利が成立した場合等において「当該権利を活用した事業展開を計画している」又は「商標出願に関し、外国における悪意の第三者による先取り出願(冒認出願)対策の意思を有している」こと。
(4)外国出願に必要な資金能力及び資金計画を有していること。
≪補助対象経費≫
外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費 等
≪補助率≫
1/2
≪上限額≫
1企業に対する上限額:300万円(複数案件の場合)
≪案件ごとの上限額≫
・特許 150万円
・実用新案・意匠・商標 60万円
・冒認対策商標 30万円
公募期間や申請方法等は、実施機関(日本貿易振興機構(ジェトロ)および各都道府県の地域実施機関)によって異なります。
詳細は、下記の特許庁ホームページからご確認いただけます。
https://www.jpo.go.jp/support/chusho/shien_gaikokusyutugan.html
本事業についてご不明な点がございましたら、どうぞお気軽に弊所までお問い合わせください。
◆「東経ビジネス」九州版 2024春号に掲載していただきました
東京経済株式会社が発行している「東経ビジネス」の九州版 2024春号において、会長の加藤を取り上げていただきました。
事務所創業から30年間の歴史や、今後の取り組みなどについてのインタビュー記事を巻頭から3ページに亘って掲載していただきました。
「東経ビジネス」2024春号は、弊所でご覧いただけるほか、以下のリンクより購入可能です。
https://www.tokyo-keizai.co.jp/archives/category/tokei-business
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5.所員ほのぼの日記
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◆ツール・ド・九州
「ツール・ド・九州」ってご存じでしょうか?
自動車のレースもあるのですが、今回は自転車のレースのお話です。
公道を封鎖して行われます。
「ツール・ド・九州」は国際レースの1つです。
九州で昨年初開催されました。
https://www.tourdekyushu.asia/tdk-2023/
10/6(金)~10/9(月)の4日間で小倉、福岡、熊本、大分を回ります。
初日、私は有休を取り、小倉城のレース観戦に行きました。
この日は周回コースなので何度も目の前を通ります。
レース前、選手たちは練習走行しており、観客に近付いて応援の旗をくれたり、握手してくれたり、非常にフレンドリーです。
いざレースが始まると、手の届きそうなところを猛スピードの自転車が集団で通ります。
また、集団の前には先導のバイクが走っているのですが、オフィシャルライダーの方が手を振ったりしてくれます。
レースそのものはすごい迫力ですが、それ以外も存分に楽しめます。
私は初日のレースが終わるとすぐに翌日の観戦ポイントへ向かいました。
目指す観戦ポイントは、山岳ポイントがかかる長谷峠です。
道中は予定コースをトレースして行ったのですが、道路封鎖の準備が着々と進められていました。
私は途中の道の駅「おうとう桜街道」で食料を買い込み、温泉に入ってから小石原のRVパークへ向かいました。
小石原のRVパークは旧小石原小学校をリノベーションした複合施設で、ビュッフェなどもあったのですが、つい先日閉鎖されましたね。残念です。
翌日早朝、RVパークから観戦ポイントまで歩いて行き、観戦しました。
それなりに人も居たのですが、選手達が上ってくるのを待っている間に大きなスズメバチに追いかけ回されて散り散りになったり大変でした。
ここでも先頭の選手が来る前には、警察車両、オフィシャルカー、オフィシャルバイクなどがアナウンスしながら通ります。
そして気分が盛り上がったところで選手が一気に通過し、その後に各チームのサポートカーが延々と繋がって走ってきます。
ここでも皆さん手を振って声援に応えてくれます。
その後は小石原で買い物をしつつ車へ戻り、車内のテレビでYouTube観戦した後、一旦帰宅しました。
そして翌日、今度は娘を連れて4日目のスタート地点であるオートポリスへ向かいました。
オートポリス内のキャンプ場に宿泊し、朝のスタートを見届けます。
ところが、前日が大雨だったせいか、霧が濃くて全くコースが見えません。
ほぼ何をしにきたのか分からない状態でしたが、こんなこともあろうかと娘と2人でバギー体験を予約していて良かったです。
雨上がりだったので泥まみれになりながらバギー体験できました。
その後はゴール地点の日田へ先回りする予定でしたが、道路封鎖の影響でなかなかサーキットから脱出できず、ゴールは結局車内でのテレビ観戦となってしまいました。
自転車レースの醍醐味は選手との距離感ですね。
選手に手が届く距離から観戦できます(※絶対触れてはダメです)。
初開催の「ツール・ド・九州」は事故もなく大成功だったようで、
今年もまた10/11(金)~10/14(月)に開催されます。
https://www.tourdekyushu.asia/
大変申し訳ありませんが、今年も10/11(金)はお休みさせて頂きます!