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    「加藤合同国際特許事務所~知財とびうめ便り~」 Vol.95

   発信日:2024年 3月 1日   発信者:加藤合同国際特許事務所
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◇ 目 次 ◇

1.事務所創立30周年のお知らせ

2.会長コラム
  ◆優れた発明をもっと世に出したい

3.知財ニュース
  ◆ブリヂストン、中国で意匠権侵害訴訟に勝訴

4.連載 知財講座
  ◆第95回:特許「AIを含むコンピュータ・ソフトウェア関連発明」

5.所員ほのぼの日記
  ◆工事現場の角(かど)

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 1.事務所創立30周年のお知らせ
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 おかげさまで加藤合同国際特許事務所は、2024年3月1日をもちまして、創立30周年を迎えることができました。
 これもひとえに皆様のご愛顧とご支援のおかげでございます。心より感謝を申し上げます。

 変化の激しい時代の中、新しいものを生み出し、独自性や競争力を高める知的財産の重要性が年々高まっていると感じております。

 改めて初心に戻り、これからも知的財産を通じて少しでも皆様に貢献できるよう、たゆまぬ精進を積み重ねてまいる所存ですので、皆様には一層のご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。

  所長 弁理士 南瀬 透


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 2.会長コラム
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◆優れた発明をもっと世に出したい

 人類は、有史以来「石器」や「火」など数々の発明を創り出し、生活に活かしてきました。それによって、生きるための食糧を得、命を脅かす外敵から身を守り、多くの病から命を救い、天候に左右されない快適な生活を可能にし、数千年にわたり命をつないできました。

 モノがあふれ、社会構造が複雑化した現代において、発明を人々の生活に役立たせるには、発明を「生む」だけでなく、多くの人にそのことを知らせ、また既得権益の抵抗など、普及を阻む様々な困難に打ち克つ「力」が必要です。

 だから、優れた発明でありながら、社会の隅に隠れ、日の目を見ないものが、この世には数多く存在します。良いものが世の中に普及するのではないのです。悲しいが、それが現実です。『それは、社会にとって、人類にとって大きな損失である』と私は叫びたい。

 弁理士として30年間、私は、約2万件の特許や商標などの知的財産権の成立に関与させていただきました。そのうちのどれほどが人々の生活に活用されているでしょうか。
 多くの発明と出会った者の使命として、今後、私は、社会の隅に隠れた発明を明々と照らし出し、これを次々と世の中に届けることに全力を尽くしたい。

 そのため、私を代表取締役とした、「株式会社照隅(しょうぐう)」を設立しました。

 社名「照隅」は、天台宗の開祖「最澄」の「国の宝とは何物ぞ、宝とは道心なり。道心ある人を名づけて国宝と為す。故に古人の曰く、径寸十枚、是れ国宝にあらず。一隅を照らす、此れ則ち国宝なりと」に由来するものです。

 「社会の隅に埋もれた、素晴らしい技術や商品、サービスに一筋の光をあて、これを愚直に継続することで、世に出し、社会に貢献する。社会のどこにあっても、その立場、立場においてなくてはならぬ、かけがえのない存在になる」ことを社是とし、活動します。

 私一人の力などたかが知れています。今後、共通の志を持ち、事業化を成功させるための様々なスキルを持つ専門家と手を携え、企業内に眠っている知的財産の発掘、これをベースとした売れる商品へのブラッシュアップ、知的財産を活用したビジネスモデルの構築、他社の参入を効果的に守る知的財産戦略構築、成長に必要な資金調達、多くの人に知ってもらうためSNSなど文明の利器を最大限活用したプロモーション活動、ユニークさを持ちつつマーケットインの次世代商品づくり等々、今までお世話になった社会やお客様への御礼の意味も込め、優れた発明を世に出す仕組みづくりに挑戦します。

  会長 弁理士 加藤 久


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 3.知財ニュース
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◆ブリヂストン、中国で意匠権侵害訴訟に勝訴

 ブリヂストンは2月1日、中国のタイヤメーカーであるHAWK社を相手に提起していた意匠権侵害訴訟について、中国最高人民法院で勝訴したと発表しました。

 ブリヂストンは、2017年6月に同社保有のトラック・バス用タイヤのトレッドパターン(※1)に関する意匠をHAWK社が模倣したとして、意匠権侵害で提訴していました。

 2024年1月に同社の主張が認められ、最高人民法院からHAWK社に対して損害賠償金30万元(約600万円)の支払いを命じる判決が下され、ブリヂストンの勝訴判決が確定しました。

(※1) タイヤが路面と直接接する部分に刻まれている溝や切り込みのこと


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 4.連載 知財講座
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◆第95回:特許「AIを含むコンピュータ・ソフトウェア関連発明」

 最近は、以前よりも増して色々なところでAIが使われていることを感じるようになりました。その時流に沿ってか、AI関連発明の特許出願件数も右肩上がりとなっています。第三次AIブームというやつです。数字で示すと、全世界のAIに関する特許(AI特許)の出願公開件数は、2017年で約6万2千件、2018年で約7万6千件、2019年では10万件を超えています。

 では、その内訳はどうなっているのでしょうか。日本における、2021年のAI関連発明の特許出願件数(公開されているもの)は約1万件にのぼります。そのうち、画像処理(FI:06T)に関するものが約1,650件と一番多く、次いでAIコア技術(FI:G06N)に関するものが約1,400件と続きます。それ以降は、ビジネス(FI:G06Q)に関するもの、医学診断(FI:G06B)に関するものがそれぞれ約700件と続きますが、これらの他に音声処理(FI:G10L)に関するもの、情報検索・推薦(FI:G06F16)に関するもの、材料分析(FI:G01N)に関するもの、交通制御(FI:G08G)に関するものなど、AIが多種多様な分野で活用されていることが分かります。

 なお、AI関連発明といった新しい技術分野は、最近出てきたものですので、浸透するまでは他の技術分野と異なる部分も多々あります。
 例えば、AI・IoT特許分野における特許査定率は、他の技術分野と比べて高い値となっています。具体的には、2017年は81.3%、2018年は82.2%、2019年は82.9%と、全体の特許査定率(毎年、75%前後)と比べて高くなっています。これは、拒絶の理由となる(新規性や進歩性を否定する)先行技術文献が、まだ世の中に十分に存在していない(少ない)ためだと思われます。
 また、これまでは学習済みモデルや機械学習モデルといった馴染みのない表現も、今では請求項等の記載で一般的に用いられるようになってきましたし、より最近では、生成AIを意味する自然言語生成モデルという表現も用いられるようになってきました。

 このように、AIを含むコンピュータ・ソフトウェア関連発明は今後もニーズが高まり、かつ注目されていく分野の1つかと思いますので、アンテナを張って、知財化のトレンドや特許庁の取り組みなどを積極的にキャッチしていく必要があると思われます。


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 5.所員ほのぼの日記
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◆工事現場の角(かど)

 この3週間ほど、事務所の隣の工事現場の透明な角(の中身)を見るのが日課です。ガンダムのプラモデルらしきものが飾ってある、並べ替えていることもある、という話を事務所内で聞いて、早速帰り道に見てみたのが始まりです。

 1辺が1メートルほどの直角三角形の地面には人工芝が敷いてあり、その日は、高さ20cmもないほどの緑色のロボットのようなものが3体とそれぞれの横にアニメの一場面のような人の顔が一人ずつ描かれた名刺くらいのカードが並んでいました。そして、奥の壁には「#工事現場のガンプラさん」と書かれています。
 検索すると昨年のハロウィーンの時季の写真も出てきました。いつから始まったか分かりませんが、私はかなり長いこと気付かずに前を歩いていたようです・・・

 その後、毎日覗いているのですが、平日に見ている限り、本当に毎日違います。内容は、きっと「分かる人には分かる」んだろうな、というもののようです。季節に合わせて、バレンタインデーの贈り物をしている場面は、素人にもたぶん分かりました。
 工事現場の中の人が、毎日楽しく(たまに苦しみながら?)並べているんだろうな、と思いながら近くまで行って見ています。これからもどのように変化するのか毎日楽しみです。

 今回、このような透明のスペースのことを検索してみると、曲がり角で反対側の様子が見えることで出会い頭の衝突を防ぐ目的があるそうです。
 造花などを飾ってあるのは実際に見たことがありますが、本物の植物を育てたり、季節を表すディスプレイだったり、何も飾らずに工事現場の中が見えるようになっている例も出てきました。鉄の壁で囲まれた内側の現場が外側の地域と交流する意図もあるんだろうなと思います。