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  「加藤合同国際特許事務所~知財とびうめ便り~」 Vol.90

  発信日:2023年 5月 1日  発信者:加藤合同国際特許事務所
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◇ 目 次 ◇

1.弁理士コラム
  ◆新型コロナウイルスに関する話題(その4)

2.知財ニュース
  ◆ドコモ、サムスンへ標準必須特許をライセンス供与

3.連載 知財講座
  ◆第90回:商標「商標と商品・役務の類否について」

4.事務所からのお知らせ(イベント含む)
  ◆令和5年度中小企業等外国出願支援事業について

5.所員ほのぼの日記
  ◆14年ぶりの世界一

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 1.弁理士コラム
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◆新型コロナウイルスに関する話題(その4)

 政府は、1月末、新型コロナの感染症法上の位置づけを、大型連休(GW)明けの5月8日を以て季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行することを発表しました。GWの前に移行した場合、人の往来が増えて感染が拡大する懸念があったことやGW中の医療機関の負
担などを考慮したとされています。これに先立ち、3月13日以降は、マスクの着用も「個人の判断に委ねる」としています。

 このように、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も一段落した感がありますが、昨年に引き続きCOVID-19の第4弾を書かせて頂きます。

 前回(昨年5月末)世界全体の感染者は5億人、死者は6百万人を超えるに至ったと記しています。今では世界の感染者数は、7.7億人、死者は7百万人に達し、わが国でも感染者数は、33.5百万人、死者は7.4万人になりました。

 私の家族もこの流行に後れることなく、昨年7月~8月に、孫(8歳)から母(94歳)まで、私を含め9人のうち7人がオミクロン株に感染してしまいました。幸運にも、全員大事には至らず、副作用もなく回復しました。私にとって些か驚きであったのは、同じような濃厚接触者にも拘らず、偶然か、あるいは免疫力や遺伝子の違いによる必然かは分かりませんが、2人が発症を免れたという事です。ウイルスと人間(人体)の係わりは得てして妙であると感じ入った次第です。

 ところで、新型コロナウイルスは、先進国、発展途上国を問わず世界中に被害が広がっており、世界的大流行(パンデミック)対応に必要な薬品等の自由な流通を可能にすることが不可欠であり、かかる人類の脅威に対し、独占排他権という知的財産の保護と公益との関係をど
うすべきか、新たな課題が突き付けられていることを挙げてきました。
 今回は、このような課題に関連するトピックスを2つほどご紹介させて頂きます。

 1つ目は、昨年の6月にジュネーブで世界貿易機関(WTO)の閣僚会議が開催され、20カ月に渡って賛否が分かれていた新型コロナウイルスワクチンの特許を巡る対立に結論が出ました。
 従来、アメリカ、ドイツ、スイス、ロシア等は新型コロナウイルスワクチン関連の特許の適用免除に反対してきましたが、漸くWTO加盟国間で新型コロナウイルスワクチンの供給拡大を目指す措置に関して合意に達したという事です。この合意によって今後5年間に渡り、インドや南アフリカ等の発展途上国の企業は自国の政府の承認を得る事で、ワクチンの知的財産権を持つ特許権者の同意を得ずに、新型コロナウイルスワクチンを製造する事が可能になりました。尤も、ワクチンの製造には高度の知識と技術が必要なことから発展途上国でのワクチン製造拡大に繋がるかは不透明といわれています。

 2つ目は、COVID-19の蔓延防止の実現に向け、関連する特許を解放するという「COVID-19と戦う知財宣言」です。宣言では、COVID-19の蔓延を食い止めるには業界の垣根を越えて治療薬やワクチン、医療機器、感染防止製品などの開発および製造をする必要があるとし、知的
財産権が開発および製造の障害にならないように、権利行使しないと宣言することで開発および製造を迅速化できるとしています。この宣言には、キヤノンや日産自動車など多くの国内の企業や組織が名を連ねています。
 権利行使を実施せず対価や補償を求めない知的財産権は、特許権、実用新案権、意匠権及び著作権であり、期間は世界保健機関(WHO)がCOVID-19蔓延の終結宣言を行う日までとするとされています。
 なお、海外でも同様の活動「Open COVID Pledge」が展開されておりIntel、Facebook、Amazon、IBM、Uberなどが参加しているようです。

 弁理士 久保山 隆


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 2.知財ニュース
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◆ドコモ、サムスンへ標準必須特許をライセンス供与

 NTTドコモは、4月10日、サムスン電子との間で5Gを含むドコモ保有の標準必須特許についてライセンス契約を締結したと発表しました。この契約により、サムスンはドコモに対しライセンス料を支払うことになります。

 ドコモは、W-CDMA、LTEおよびLTE-Advanced、5Gの移動通信サービスに必須となる特許を国内外合わせて約10,000件保有しています。

 現在、上記の移動通信技術に関するドコモの標準必須特許のライセンスを受ける企業は、個別契約・特許プール(複数の標準必須特許を一括してライセンスする仕組み)でのライセンスを合わせて80社以上になっており、同社は今後もライセンス先を拡大していくとのことです。


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 3.連載 知財講座
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◆第90回:商標「商標と商品・役務の類否について」

 商標登録は、商標(ネーミングやマーク等)だけではなく、それを使用する商品・役務(サービス)を指定してセットで出願・登録する制度です。商標登録出願したもの全てが登録できるわけではなく、同一又は類似の商標が同一又は類似の商品・役務で先に出願・登録されて
いると、後からされた出願は審査で拒絶されます。

 商品・役務の類否は、特許庁の審査においては、基本的には各商品・役務に付与される「類似群コード」によって判定されますので、比較的容易に判別できます。
 例えば、果物の「りんご」と「みかん」は、同じ類似群コード『32E01』が付与された類似の商品ですが、果物の「りんご」と飲料の「りんごジュース」は、異なる類似群コード『32E01』と『29C01』が付与された非類似の商品です。

 一方、商標の類否について現在の審査基準では「出願商標及び引用商標がその外観(見た目)、称呼(読み方)又は観念(意味合い)等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察し、出願商標を指定商品又は指定役務に使用した場合に引用商標と出所
混同のおそれがあるか否かにより判断する。」とされていますが、商品・役務の類否のように誰もが同じ結論に達するような明確な線引きはなく、判断する人や時代によって異なる結論になることも珍しくありません。

 商標の類否は画一的なものではなく、専門的な判断を要する場面も少なくありません。登録できると思って出願したものの類似の商標があり登録できなかったというリスクを極力おさえるためにも、商標登録を検討される場合は、一度ご相談いただくことをお勧めします。


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 4.事務所からのお知らせ
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◆令和5年度中小企業等外国出願支援事業について

 特許庁は、外国への事業展開等を計画している中小企業に対し、外国出願にかかる費用の補助を毎年行っておりますが、今年も募集が開始されますので概要をお知らせします。

≪補助率≫
 1/2

≪上限額≫
 1企業に対する上限額:300万円(複数案件の場合)

≪案件ごとの上限額≫
 特許         150万円
 実用新案・意匠・商標  60万円
 冒認対策商標(※)   30万円
 (※)冒認対策商標:第三者による抜け駆け出願(冒認出願)の対策を目的とした商標出願

≪応募期間≫
 応募の受付期間は、実施機関(日本貿易振興機構(ジェトロ)および各都道府県等中小企業支援センター等)によって異なります。
 現在までに分かっている応募の受付期間は以下のとおりです。

 ・日本貿易振興機構(ジェトロ)
 第1回 令和5年5月8日(月曜)~5月19日(金曜)予定
 第2回 令和5年7月3日(月曜)~7月14日(金曜)予定
 第3回 令和5年9月4日(月曜)~9月15日(金曜)予定

 ※予算残が生じた場合は、第二次募集がされることもあります。また、応募期間が短いためご注意ください。

 実施機関ごとの募集状況や応募資格につきましては、下記URLよりご確認いただけます。
 https://www.jpo.go.jp/support/chusho/shien_gaikokusyutugan.html

 本事業についてご不明な点がござましたら、どうぞ気軽に弊所までお問い合わせください。


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 5.所員ほのぼの日記
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◆14年ぶりの世界一

 2023年3月21日(日本時間3月22日)、野球の世界大会であるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝がアメリカ・マイアミで行われ、日本はアメリカを3-2で下して、見事14年ぶりの世界一に輝きました。(ぱちぱち)

 第5回大会である今大会は、コロナの影響で2年遅れでの開催となりましたが、日本プロ野球(NPB)からだけでなく米メジャーリーグ(MLB)からも有力選手が参加し、とても豪華なチーム構成で、大会前からWBC関連のニュースも多く、注目度の高い大会だったと思います。大
会では、毎試合いろいろな選手が活躍し、日本に感動を与えてくれました。素晴らしかった。

 そんな記憶に残る大会で「そんなぁ~」と思った出来事。それは、年齢の壁でシャンパンファイトに参加できなかった選手が1人いたこと。日本のプロ野球では優勝チームはビールかけでお祝いですが、WBC優勝後はメジャー流にシャンパンファイトでお祝いでした。

 シャンパンファイトに唯一参加できなかった選手。それは、チーム最年少の高橋宏斗選手です。彼は弱冠20歳の若きサムライです。
 
 ん?何の問題が?と思うところですが、そこはアメリカ。アメリカではお酒は21歳からだそうです。シャンパンファイトに参加する気満々だった彼は直前でマネージャーさんに止められます。

 日本人だし、日本の法律ではOKだし、お酒飲まなければいいんだし、シャンパンファイトの輪にいさせてあげればいいのにと心情的には思いました。けど、その国ではその国の法律を守らないといけません。「日本ではあーだ、こーだ」と言っても仕方ありません。文句は言え
ません。知財も同じですね。特許でも商標でもその国ではその国の知財制度に則って判断されます。「国に入ってはまず禁を問え」、「郷に入っては郷に従え」です。

 高橋宏斗選手には、2026年に開催予定の第6回WBCへの2大会連続出場、そして、2大会連続優勝&念願のシャンパンファイトに期待したいです。