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    「加藤合同国際特許事務所~知財とびうめ便り~」 Vol.87

   発信日:2022年 11月 1日   発信者:加藤合同国際特許事務所
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◇ 目 次 ◇

1.弁理士コラム
  ◆つながる特許庁

2.知財ニュース
  ◆石川県が「ルビーロマン」の商標を韓国に出願

3.連載 知財講座
  ◆第87回:特許「間接侵害」

4.事務所からのお知らせ
  ◆知財研修・セミナーサービスのご紹介

5.所員ほのぼの日記
  ◆利用しました「全国旅行支援キャンペーン」

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 1.弁理士コラム
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◆つながる特許庁

 先月、「つながる特許庁in熊本」に参加してきました。

 「つながる特許庁」とは特許庁が開催するイベントで、「日本各地を訪問し地域の皆様と直接つながることにより知財を身近に感じていただく」、また、「地域と全国をつなげることで各地の知財の取組を全国へ発信する」ことを目的としています。
 
 このイベントは日本各地で開催され、今年度は熊本(10/4)を皮切りに、札幌(11/9)、大阪(11/14)、広島(12/16)と続きます。また、年が明けてからは、那覇(1/26)、日立(2月上旬)で開催される予定です。
 なお、昨年度は三重(津)、新潟(長岡)、香川(高松)などで開催されました。

 また、イベントでは、開催地域における企業、支援機関等による知財の先進的な取組事例の紹介や、各分野の第一線で活躍している専門家等を講師に迎え、知財の気づきとなるセミナーが行われます。
併せて、知財や経営に関するお悩みに答える「相談コーナー」もイベント会場内に設置されます。

 役立つ情報が満載で、かつ参加費は無料なので、知財や経営に関心がある方、知財や経営について相談ごと・悩みごとがある方にお薦めしたいイベントです。
 コロナの影響もあり会場内で傍聴できる人数は限られていますが、オンライン配信も行われています。そのため、遠方の地で開催される場合でもオンラインで視聴できて便利です。

 なお、熊本では午後から半日ほどかけて、「スタートアップエコシステムと知財」に関するセミナーおよびトークセッションと、「スタートアップシーンで活躍する九州発注目プレーヤーの挑戦」とし て数社の取組事例の発表が行われました。
 最初のセッションでは、知的財産権を用いた売上の確保と利益率の維持について、非常に興味深い話を拝聴することができました。次のセッションでは、画期的な、これまた非常に興味深い具体的な取組事例を拝聴することができました。
 円滑な経営を実現するためには、キャッシュフローを回すことが重要になります。
 そのため、製品開発から販路開拓まで行い売上を確保した後、継続して利益率を維持することが重要になります。そして、この時に特許権や意匠権などといった独占排他権を活用することで、これらが有機的に結び付くことになります。
 今回拝聴した取組事例の話は、正にこのようなストーリーを実現されているものだと感じました。

 さて、話は変わりますが、2ヶ月ほど前に日本製紙グループの日本製紙クレシアが、大王製紙に対して同社製品の販売差し止めおよび損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴したというニュースが流れ てきました。

 日本製紙クレシアと言うと、Kleenex(登録商標)やSCOTTIE(登録商標)などのティッシュ製品、トイレットロール製品が有名かと思います。
 一方、大王製紙と言うと、エリエール(登録商標)が有名かと思います。

 日本製紙クレシアは、大王製紙が販売する「エリエールi:na(イーナ)トイレットティシュー 3.2倍巻 ダブル」などが、自社の特許権を侵害すると主張しているようです。なお、この3.2倍巻の製品は、今年の4月から販売が開始されたものです。

 つまり、日本製紙クレシアは、1ロールの長さが従来の製品より3倍長いトイレットペーパーに関する特許権を保有しており、大王製紙が販売する上記製品が、当該特許権を侵害していると主張しています。
 これに対して大王製紙は、侵害を否認し応訴する姿勢を見せています(9月26日付けの大王製紙ニュースリリースより)。

 また、NHKの記事によると、日本製紙クレシアでは3倍巻きの製品がトイレットペーパーの売り上げの35%を占め、大王製紙でもこうした製品が売り上げの40%を占めるなど、3倍巻きの製品は各社の主力商品となっているようです。
 人気があるのは、交換や購入の手間が減らせる、1梱包あたりの個数が少なくなるため保管しやすい、などといった理由からでしょうか。
 同じくNHKの記事によると、日本製紙クレシアは3倍巻きの製品を6年前から販売しているようです。

 もちろん、どちらの主張が正しいかはこれから行われる裁判の結果次第ですが、製品開発から販路開拓まで行いこの数年間で売上を確保した日本製紙クレシアが、特許権を行使し、継続して利益率を維持することができるのか今後注目されるところです。

  弁理士 宇野 智也

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 2.知財ニュース
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◆石川県が「ルビーロマン」の商標を韓国に出願

 NHKは10月5日、石川県が開発した高級ぶどう「ルビーロマン」が、韓国に無断で流出したとみられる問題を受けて、正規のルート以外での流通を防ぐため、県が韓国特許庁に「ルビーロマン」を商標登録出願したとWEBニュースで報じました。

 石川県が開発した高級ぶどうの「ルビーロマン」をめぐっては、去年、同じ名前で販売されているぶどうが韓国で見つかっており、県は、苗木が無断で流出したとみています。
 韓国では、すでに個人によって「ルビーロマン」の商標が取得されていましたが、この個人から警告を受けていた韓国の種苗会社が、「ルビーロマン」の商標登録を無効とする審判を申し立てていました。この申し立てに対して韓国の特許庁が、今年の8月、「日本の高付加価値品種の名前と認識されていたとみるのが妥当で、消費者を欺くおそれがある」などとして商標登録を取り消す決定をしたため、 県が韓国特許庁に商標登録出願したとのことです。

 近年、自己の商標を他人が先に登録してしまうという事例が、特に海外で頻発しています。
 上記の事案に関しては、「ルビーロマン」の著名性が認められ登録が無効となりましたが、商標は基本的には早い者勝ちの権利です。そのため、海外での事業展開をお考えの場合は、お早めにご相談いただくことをお勧めします。

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 3.連載 知財講座
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◆第87回:特許「間接侵害」

 本来、特許権の侵害は、請求項に記載された発明特定事項の全部を業として実施した場合(いわゆる直接侵害)となりますが、この直接侵害に当たらない場合でも、例えば特許権の侵害に用いられる専用部品の供給などの行為は直接侵害を誘発する可能性が極めて高いため、そのような行為を放置することは特許権の実効性を失わせることになります。

 そこで、このような問題に対処するために設けられた規定がいわゆる間接侵害の規定です。間接侵害は、直接侵害ではないが、侵害を誘発する可能性が極めて高い一定の行為を特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権の侵害とみなすものです。

 この間接侵害が成立する為の要件は、特許法第101条、実用新案法第28条、意匠法第38条、商標法第37条、著作権法第113条に限定列挙されております。

 例えば、特許法では、他人が特許製品の生産にのみ用いる物(専用部品)または特許方法の使用にのみ用いる物を生産、販売等することは、直接侵害には該当しませんが、これらの行為は直接侵害を誘発する可能性が極めて高いため、侵害行為とみなして禁止しております(特許法第101条第1号、第4号)。

 また、専用品に限らず、その発明による課題の解決に不可欠なものを、特許権の存在および特許発明の実施に用いられることを知りながら、生産、販売等することも侵害行為とみなされます(特許法第101条第2号、第5号)。

 また、平成18年の一部改正において、侵害物品を販売等または輸出のために所持する行為についても侵害とみなされるようになりました(特許法第101条第3号、第6号)。

 このように間接侵害の規定によって、特許権者等の権利は一定の要件の下で広く保護されますが、間接侵害の立証責任は権利者側にあり、直接侵害よりも難しくなることから、特許出願時にできるだけ多面的な請求項(クレーム)を作成しておくことが重要となります。

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 4.事務所からのお知らせ
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◆知財研修・セミナーサービスのご紹介

 弊所では、ご要望に応じて、お客様の会社の状況、知財への意欲、今後の事業計画等をお聞きし、単なる法律知識だけではなく、発想方法、知財を事業に活かす方法等、事業に役立つオーダーメイドの知財研修・セミナーを実施いたします。

 <例>
 ・事業における知的財産(特に特許)の重要性を学ぶ
 ・明細書の書き方を学ぶ
 ・日々の業務で必要な知的財産制度(特に特許制度)を学ぶ
 ・リスク対策として必要な権利解釈と抵触性判断を学ぶ 等

 知財研修・セミナーサービスにご興味をお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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 5.所員ほのぼの日記
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◆利用しました「全国旅行支援キャンペーン」

 政府の「全国旅行支援キャンペーン」を利用して、妻と二人で1泊2日のドライブ旅行に行ってきました。
 
 このキャンペーンを利用すると、宿泊料金が5000円補助(または最大40%割引)され、クーポン券(平日最大3000円、休日1000円)が支給されます。クーポン券は宿泊施設のある県内の各種店舗(道の駅や量販店など)での買い物に使用できます(使えないところもあります)。

 このキャンペーンを利用して平戸の某ホテルの予約が取れたので、10月某日、妻と二人で平戸エリア及び九十九島エリアのドライブ旅行に行きました。

 旅行初日の朝、自宅を出発し、鳥栖、佐賀、武雄、有田、伊万里、松浦の順番で平戸に向かいました。
 特にコースは決めていませんでしたが、道路沿線の景色も楽しみたいので、敢えて、高速道路は使わず、一般道路を走行しました。

 途中、何回か休憩を取りながら車を走らせていると、昼食時間が近づいた頃に松浦市に入りました。
 何を食べようかと思案していると「アジフライの聖地、松浦」と書かれた看板や旗竿が道路沿いに林立しているのが目に入りました。

 そう言えば、全くの偶然ですが、出発当日の朝のテレビ情報番組で「アジフライの聖地、松浦」というタイトルで、現地(松浦市)からの中継映像が放映されていたのを思い出したので、妻に相談したところ、折角だからアジフライを食べようということになりました。

 しかし、松浦は初めての土地なので、どの店が美味しいのか全く分かりません。
 2~3軒の飲食店を物色したところ、長崎地域では知名度のある定食チェーン店があったので、そこに入り、二人とも迷うことなく、アジフライ定食を注文しました。

 数分待つうちに、揚げたてのアジフライ2匹と、ご飯、みそ汁などがセットになったアジフライ定食が運ばれてきました。
 アジフライは肉厚で、サクサクしており、美味しく食しました。魚介類料理に詳しくない私でもスーパーで売っているアジフライと食感も味も違うのが分かりました。
 聞くところによると、松浦市で出されるアジフライは水揚げしてそのままフライにしたものであること、つまり冷凍されたものではないことが条件の一つになっているそうです。

 昼食を終えた二人は車に乗り込んで平戸の某ホテルに向かいました。
 ホテルにチェックインした後はウエルカムドリンク(無料の生ビール)を飲み、入浴、夕食(バイキング+飲み放題)を楽しみ、就寝しました。
 翌朝、朝食(バイキング+飲み放題)を終え、チェックアウトした後、このホテルの売りの一つである平戸瀬戸の船舶クルージング(無料です)に参加しました。

 チェックアウト後、ホテルが用意した先導車に続いて各自の車で船着場に行くと、参加者は貸与されたライフベストを着用し、4艘のクルージング船(16トンクラス)に分乗しました。

 出発準備が整った4艘の船舶は順次、平戸瀬戸(九州本土と平戸島との海峡部分)に向かって出航しました。出航して暫くの間、各船舶はゆっくりと海上を航行しながら、ガイドの方から周囲の景色の説明などを聞きました。

 10分ほど経過したころ、各船舶はスピードを上げ始めました。エンジンの排気音が高まり、4艘の船舶は横並びして、まるでボートレースのような高速度で航行するのです。
 直線コースを過ぎると、高速度を保ったまま旋回するので凄い迫力です。殆どの参加者は甲板に立っているので、押えていないと帽子や眼鏡が風圧で飛ばされそうなスピードです。妻はキャーキャーと歓声を上げていました。私も同様でした。

 30分余りのスリル満点のクルージングを終えると各船舶は船着場に戻り、参加者は下船して、ライフベストを返却し、解散となりました。
 船といえば、二人とも公園の貸しボートか大型のフェリーしか乗ったことがなかったので、今回のクルージングは生まれて初めての経験で感動しました。

 クルーズを終えた二人は、この後、九十九島エリアへ移動し、引き続き、観光を楽しみました。楽しい、楽しい、ドライブ旅行でした。