本メルマガは、名刺を交換させていただいた皆様にお送りさせていただいております。
 今後の配信がご不要の場合は、お手数をお掛け致しますが、タイトルを「配信停止」に変更いただき、本メールをそのままご返信いただきますようお願いいたします。

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
    「加藤合同国際特許事務所~知財とびうめ便り~」 Vol.78
   発信日:2021年 5月 6日   発信者:加藤合同国際特許事務所
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

◇ 目 次 ◇

1.弁理士コラム
  ◆この講義は私に関係あるのか

2.知財ニュース
  ◆美容器特許侵害訴訟で4億4千万円の損害賠償金確定

3.連載 知財講座
  ◆第78回:特許「国内消尽論」

4.事務所からのお知らせ(イベント含む)
  ◆「会長相談室」公開予定について

5.所員ほのぼの日記
  ◆超久しぶりのレコードの音色

┏━━━━━━━━┓
 1.弁理士コラム
┗━━━━━━━━┛
◆この講義は私に関係あるのか

 仕事柄、いろいろなところでセミナー等をさせていただくことがありますが、例えば学生に講義を行うと、多くの場合、興味を持ってないことが明らかな人がいます。

 自分の学生時代を思い出すと、確かにすべての講義を全集中で聞いていたわけでもないですし、そもそも大量に受ける授業の中で、これからも覚えておく意味があるものがどれかもわかりません。

 私自身が、テクニックにあふれ、練り込まれた隙のない、面白いセミナーをしているわけでもないのも事実です。また、多くの場合、知的財産権の講義は、特別講義などと位置付けられ、法律と技術の間で独特な考え方を用いる、学生からすると通常の専門分野からみてもイレギュラーなものになります。

 知的財産のセミナーを確りと聞いている学生は、知的欲求が高くなんでも吸収できるか、よほど真面目か、成績などの緊張感があるのか、たまたま興味がある話題だったか、すでに十分な休みをとれ余裕がある時間帯だったかなどの場合なのでしょうか。

 そんな中、多くの学生が興味を持ってくれる話題があります。
 それは、「この講義は君に関係あると思いますか。」と問いかけたときです。(これに限らず、クイズを出すと考えることで興味を持ってくれやすいですが。)

 例えば、「これから、自分が発明者になる可能性はあると思いますか。」などの問いを出します。
 最初の感想は、「そんなのわかりません」でしょう。または、「私はきっとなります」あるいは、「私はならないと思います」でしょうか。
 この問いを出した後に、「じゃあ、どの程度の確率で発明者になると思いますか。」と問いかけます。

 日本の特許出願件数は大体30万件/年としましょう。1件の特許出願件数の発明者数は体感的には3人程度が平均でしょうか。
 これから仕事をする時間は、仮に20歳から60歳だとしても40年程度です。
 日本の人口は約1億2千万人として、様々な意見があるかもしれませんが大きく文系・理系のいずれかに分けられるのであれば、発明にかかわりやすそうな理系の人は1/2です。

 そうすると、年間100万人が発明者になり、生涯仕事をしている期間に4000万人が発明者になります。
 人口の半分が理系だとすると6000万人。すると、4000万人/6000万人、2/3の確率で、発明者になる可能性があります。
 当然、多くの発明をする人もいれば、全く発明者にはならない仕事もあるかもしれません。

 しかし、これだけの確率であれば、ここにいる40人のうち、何人も発明者になる可能性があると思いませんか。それが自分ではないといえますか。また、発明者以外にも知財にかかわる立場はたくさんあります。先ほど漠然と思い浮かべた以上に身近なことだと思えませんか。

 このような考え方は、フェルミ推定と呼ばれるそうです。

 先ほどの数は十分な検証などを行っていないので、仮定や計算に誤りがあるかもしれません。しかし、このような数値自体に意外性を感じるのか、または、このような推論による考え方自体が面白いのか、明らかに目を覚まして聞いてくれる学生が増えます。

   皆様にとっては、知財は学生時代から聞いてみたかった話でしょうか。

  弁理士 遠坂 啓太


┏━━━━━━━━┓
 2.知財ニュース
┗━━━━━━━━┛
◆美容器特許侵害訴訟で4億4千万円の損害賠償金確定

 日本経済新聞は4月18日、一対の球体(ローラー)を肌に押し付けて転がす「美容器」に関する特許(第5847904号 他1件)を侵害されたとして、特許権者の株式会社MTG(名古屋市)が株式会社ファイブスター(大阪市)に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)はファイブスターの上告を受理しない決定をしたと伝えました。

 これにより、ファイブスター社製品の一部に特許侵害を認め、損害賠償金(損害額)約4億4千万円(弁護士料5千万円含む)の支払いを命じた二審・知財高裁判決(令和2年2月28日)が確定しました。

 一審・大阪地裁では、美容器のローラー軸受けに関する本特許の自社製品に占める寄与度を10%としたため、賠償額は約1億円にとどまりました。

 二審・知財高裁では、損害額の算定において、製品の単位数量当たりの利益の額を大阪地裁同様に限界利益額で算出し、寄与度を40%とし、ファイブスター社製品の販売数の約5割がMTG社製品の販売減に影響したとして、賠償額を算定しました。

 結果的に一審から損害額が大幅に増額しましたが、最近の特許侵害訴訟では5~6年前と比較して損害額が高額化する傾向にあるようです。


┏━━━━━━━━━┓
 3.連載 知財講座
┗━━━━━━━━━┛
◆第78回:特許「国内消尽論」

 発明や商標などについて特許権や商標権を取得した場合、権利者には、その発明や商標について独占排他権や専用禁止権などが与えられます。

   例えば、特許の場合、特許権者は業として特許発明の実施をする権利を専有することができます(特許法第68条)。

   特許発明の「実施」とは、その物(特許製品)の譲渡や輸入、輸出などです(特許法第2条第3項)。
 つまり、特許権者は、例えば自分の特許製品を譲渡(販売)する権利を専有することができ、第三者が正当な権限なく自分の特許製品を販売していた場合、差止の請求(特許法第100条)や、損害賠償の請求(民法第709条)をすることができます。

 ただし、特許製品が、特許権者や実施権者(実施許諾者から特許のライセンスを受けた者)の販売行為などにより適法に国内の流通に置かれた場合、購入された特許製品には、特許権の効力は及ばないと解されています(国内消尽論)。

 これは、特許権は「発明の公開の代償」として付与される権利であるため、一度特許製品が販売・購入されたら、特許権者はその代償(利得)を得たであろうと解されるためです。  つまり、販売・購入後も特許権の効力が及び続けるとしたら、特許権者は過剰にその代償(利得)を得ることとなります(二重利得の防止)。また、販売・購入後も特許権の効力が及び続けるとしたら、社会全体の取引に支障が生じてしまいます。

 このような国内消尽論の根拠は、「BBS事件最高裁判決」にて挙げられた理由によるものです。

   BBSとはドイツの会社で、自動車用のアルミホイールについて、ドイツと日本で特許権を取得していました。
 そして、この特許製品であるアルミホイールを、BBSから正規に購入した並行輸入業者が、これを日本に輸入し、販売していました。
 この並行輸入業者の輸入行為に対し、BBSは、日本国特許権を侵害していると主張しました。

   訴訟は最高裁までもつれたのですが、結論として、最高裁は、「いわゆる真正商品の並行輸入は特許権侵害に当たらない」と判断しました。

 この判例の詳しい内容は以下のサイトに全文が載っていますので、興味のある方はご一読されてみてください。

 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54792


┏━━━━━━━━━━━━┓
 4.事務所からのお知らせ
┗━━━━━━━━━━━━┛
◆「会長相談室」公開予定について

 本年3月1日発信のメルマガ(Vol.77)でお知らせしました、無料相談サービス「会長相談室」は、今月中旬の公開に向け現在準備中です。
 公開後、弊所ホームページ等でもお知らせする予定ですので、どうぞ楽しみにお待ちください。


┏━━━━━━━━━━┓
 5.所員ほのぼの日記
┗━━━━━━━━━━┛
◆超久しぶりのレコードの音色

 今から40~50年前、世の中はオーディオブームで、私もそのブームにのって、オーディオマニアになってしまい、いろいろなメーカのオーディオ機器を揃えて音楽を楽しんでいました。

 当時の音楽を聴く媒体はレコードが主流でしたので、月1~2枚程度購入して、聴いていました。
 しかし、1980年頃から録音時間が長く、使い易く劣化しないCDが出回るようになり、レコードは年々すたれ、新曲レコードも出なくなり、店頭から消えていく運命となりました(中古レコード販売店はありましたが)。

 また当時、オーディオ機器を手作りすることもブームにもなっていましたので、雑誌「ラジオ技術」に掲載された回路図をもとに真空管A級アンプを、半田ごてを片手に持ち、安く購入したオシロスコープで波形をチェックしながら悪戦苦闘して作り上げました。スイッチを入れ、真空管が赤く染まるのに感激したものです。

 そして、手持ちの市販のトランジスタアンプと音色の聴き比べをして、自作のアンプは、シャープさにやや欠けるが、暖かみがあり、包み込むような俺好みの音色が出ていると自画自賛した記憶があります。

 また、そのころ高嶺の花だった超高級オーディオ機器(例えばアンプ1台50万円、スピーカ1台100万円等)を揃えたジャズ喫茶店等が流行り、オーディオ仲間と一緒によく通っていました。

 そうするうちに、少しずつオーディオブームが下火になり、また手持ちのアンプの調子が悪くなったこともあって、オーディオ機器で音楽を楽しむことから遠ざかり、音楽はもっぱらテレビから流れる音楽とドライブ中のCD音楽になりました。

 そして時は流れていき、この数年前から、巷でレコードを楽しむ人が少しずつ増えつつあり、静かなブームになっていると新聞やテレビからささやかれるになったことをきっかけに、そのブームに乗ろうと思い立ち、早速、大型電気店を廻り、得頃な価格で好みの音色が出るオーディオ機器を揃えました。もちろんレコードプレイヤーも入っています。

 手元には、コツコツと買い求めたレコードを段ボールに保管していました。
 段ボールを開け、数えてみると、クラシック、ジャズ、当時はやりのニューミュージック(例えば山崎ハコ、杉田次郎等)、ポップス、ロックなど様々なジャンルのレコードが250枚ほどありました。

 さあー聴くぞーと、先ずは、レコードをジャケットから取り出す。かび臭い匂いが漂う。レコード表面にカビが生じているところがあり、またゴミの付着もあるので、レコード表面をレコードクリーナで念入りに掃除する。
 そのあと、レコードプレイヤーに乗せて、回転させ、操作レバーでレコード針を慎重にレコードに降ろすと、スピーカから流れてくる超久しぶりの音色は、CDとは明らかに違う音色です。

 デジタル処理のCDに比べ、アナログ録音のレコードは、ピアノやバイオリンそしてボーカルなどの音が、生の音質に近いように感じて聴こえてきます。流れてくる音色は心に沁みわたり、音楽の世界に引き込まれていきます。

 ただ、難点として、掃除で完全に取れず残っているレコードの録音溝に入り込んだゴミや細かい傷などで、時々「ボツボツ、パチパチ」等のノイズが出ています。このノイズはレコードを聴いているあかしでもあり、また魅力の一つかもしれません。

 皆さまもいつか機会があれば、レコードの音色を楽しまれたらいかがでしょうか。

---------------------------------------------------------------------

※メルマガの配信停止・配信先変更について
<配信停止>
 タイトルを『配信停止』に変更しまして、本メルマガをご返信ください。
<配信先変更>
 タイトルに『配信先変更』を、本文に『変更後のアドレス』をご記入いただき、mail@kato-pat.jp宛にメールをお送り下さい。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

★ 編集・発行:加藤合同国際特許事務所 -メルマガ事務局-

 福岡市博多区博多駅前3丁目25番21号 博多駅前ビジネスセンター411号
 URL:https://www.kato-pat.jp/
 TEL:092-413-5378  E-mail:mail@kato-pat.jp
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/