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            「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.49
                        発信日:2016年 7月 1日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
 1.弁理士コラム
  ●人工知能(AI)と知的財産

 2.知財ニュース
  ●特許庁、他人の商標の先取りとなる商標登録出願について注意喚起

 3.連載 知財講座
  ●第49回:外国特許「EPC」

 4.イベント案内
  ●平成28年度初心者向け知的財産権制度説明会開催

 5.事務所からのお知らせ
  ●外国出願にかかる費用の半額の助成

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1.弁理士コラム
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●人工知能(AI)と知的財産

 最近、人工知能(AI)という言葉が世間を賑わせている。今年の3月、韓国の囲碁プロ棋士を米グーグルのAI「アルファ碁」が破って話題となった。
 将棋でも羽生三冠が最強のコンピューターと対戦するプロ棋士を決める「叡王戦」へ出場することがニュースになっている。

 また、国立情報学研究所等はAIで東大入試を突破する「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトに取り組んでいることが報じられている。

 AI(Artificial Intelligence)の名付け親は米国のジョン・マッカーシー博士であり、今から約60年前に脳の動きをコンピューターで実現するAIの研究が始まったとされている。

 AIには種々のタイプがあるが、代表的なものは、与えられた知識・情報に基づき決まった手順で答えを出す「エキスパートシステムタイプ」と、答えを出すための方法そのものを自分で見つけ出す「機械学習タイプ」であり、前記「アルファ碁」は後者のタイプに該当する。因みに、5年前に米IBMのAI「ワトソン」が米クイズ番組でクイズ王を破っているが、この「ワトソン」は前者のタイプである。

 AIは、既にロボットの制御や工場生産システムの最適化に応用されており、近未来の我々の生活をより快適、かつ効率的なものにするため貢献することが期待されている。

 ところで、我が国では、特許権の対象である発明や著作権の対象である思想・感情を表現した著作物については、自然人である人間のみができる創作活動の成果であるとして、人間以外のものがこれらの創作主体となることを認めていない。
 しかしながら、昨今のAIの著しい進化はAIの知的財産権による保護の見直しを迫るものとなってきた。

 先日、政府は、かかるAIやデジタル化の進歩の波に対応するために法制化に向け検討することを発表した。日本弁理士会もAIが自動作成する知的財産の取扱いについて検討を始めている。AIの進化に伴う新時代にふさわしい知的財産権の仕組みの構築への第一歩が踏み出されつつあることを実感する。

                         弁理士 久保山 隆


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2.知財ニュース
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●特許庁、他人の商標の先取りとなる商標登録出願について注意喚起

 特許庁は、5月17日、最近、一部の出願人から他人の商標の先取りとなるような出願などの商標登録出願が大量に行われているとして、仮にご自身の商標についてこのような出願がなされていた場合、ご自身の商標登録を断念する等の対応をされないように注意を呼び掛ける発表を行いました。

 発表では、この一部の出願人による出願の殆どは、手続上の瑕疵のある出願となっており、特許庁では、このような出願については、出願の日から一定の期間は要するものの、出願の却下処分を行っているとのことです。

 詳細は、下記のURLをご覧ください。
[URL] http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_shouhyou/shutsugan/tanin_shutsugan.htm

 なお、弊所では、この事実を以前から把握しており、出願前の調査において、上記の出願人による出願が発見された場合はその旨をご報告しておりますので、安心してご依頼いただければと思います。


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3.連載 知財講座
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第48回:外国特許「EPC」

 イギリスのEU離脱問題でヨーロッパのみならず世界は大きく揺れておりますが、ヨーロッパで特許権を取得して発明を保護するには、様々な方法があります。
 まずは、特許権を取得したいヨーロッパの国の各特許庁に、個別の特許出願をする方法があります。
 しかし、特許出願をする国が増えると、手続が煩雑になり費用も相当なものになる場合があります。

 そこで、欧州特許庁(EPO)に特許出願をし、欧州特許成立後にヨーロッパの国々で効力を生じさせるという方法を利用することが考えられます。

 これは、特許付与の統一規則を定め特許付与の手続を一元化することによって、欧州各国間の発明の保護に関する協力体制を強化することを目的として締約された欧州特許条約(EPC)に基づく制度です。単一の手続および単一の審査によって、複数の国で特許権を取得できる点が特徴です。

 EPC出願をすることができるEPC締約国は、2016年6月の時点で38カ国です。フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、スペイン、スイス、トルコ、イギリスなどが含まれます。トルコのようにEU加盟国でない国もEPC加盟国となれます。イギリスがEUから離脱しても当然にEPC加盟国でなくなるものではありません。

 欧州特許庁への出願は、直接出願する方法と、PCT(特許協力条約)国際出願に基づいて欧州段階に移行する方法があります。なお、フランスなどPCT国際出願による国内段階移行を認めていない国については、当該国でのみ権利化を希望する場合であっても、欧州特許庁へ出願せざるを得ません。

 欧州特許庁に出願をする場合、公用語(英語、ドイツ語またはフランス語)を用いて手続を進めることとなります。日本からの出願の場合、日本語を英語に翻訳して手続を進めることが多いですが、翻訳が間に合わない場合は、出願日から2ヶ月以内に公用語による翻訳文を提出することも可能です。

 欧州特許庁における審査は単一の審査によりますので、各国に複数出願して審査を受ける場合と比べて、手続的負担は軽減されています。しかしながら、イタリアなど実体的要件を問わずに登録される国との比較では、特許登録までの難易度が高まる場合もあるといえます。

 欧州特許が成立した後では、権利化を希望する締約国にて個別の特許権を発生させるための有効化手続を行います。有効化を行わなかった国では権利を取得できません。

 各国での有効化を行う場合、当該国の公用語による明細書・クレームの翻訳文を提出するのが原則となります。しかし、ロンドン協定により、国によっては翻訳文が不要であったり、クレームの翻訳のみ提出すればよい場合があり、翻訳の負担が軽減されています。

 なお、欧州特許が成立しても欧州全体にわたる単一の特許権を取得できるものではなく、結局は必要に応じて各締約国での個別の特許権を得る手続を行うこととなります。

 しかしそれでは欧州における発明保護の実効性に欠けるので、欧州単一特許制度の創設準備が進められております。

 この制度が創設されれば特許権の強化につながりますが、イギリスのEU離脱問題によって、今後どのような展開になるか不透明な状況です。今後の展開に目が離せません。


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4.事務所からのお知らせ
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●外国出願にかかる費用の半額の助成

 「知財 とびうめ便り」号外(H28.5.16 配信)等でご案内しておりますが、特許庁は、外国への事業展開等を計画している中小企業等に対して、外国出願にかかる費用の半額を助成します。

  補助率:1/2
  上限額:1企業に対する上限額:300万円(複数案件の場合)
(案件ごとの上限額:特許 150万円
          実用新案・意匠・商標 60万円
          冒認対策商標 30万円)

 応募期間は、実施機関ごとに異なります。平成28年7月1日現在での募集状況は以下の通りです。

・全 国:6月1日(水)~6月30日(木) ※終了
・山口県:5月9日(月)~6月17日(金) ※終了
・福岡県:5月9日(月)~5月31日(火) ※終了
・佐賀県:6月8日(水)~7月7日(木)
・長崎県:7月1日(金)~8月5日(金)
・熊本県:6月21日(火)~8月1日(月)
・大分県:(7月に募集予定)
・宮崎県:5月30日(月)~7月1日(金)
・鹿児島県:6月2日(木)~6月30日(木) ※終了

 実施機関毎の募集状況や応募資格につきましては、下記のURLをご覧下さい。
[URL] https://www.jpo.go.jp/sesaku/shien_gaikokusyutugan.htm


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