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            「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.45
                        発信日:2015年11月 2日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
 1.弁理士コラム
  ●外国出願について

 2.知財ニュース
  ●小学6年女児、アルミ缶とスチール缶を自動分別するごみ箱で特許取得
  ●特許庁、登録査定となった新しいタイプの商標43件を公表

 3.連載 知財講座
  ●第45回:特許「均等論」

 4.イベント案内
  ●九州知財活用リレーセミナーin佐賀
  ●九州知財活用リレーセミナーin熊本

 5.事務所からのお知らせ
  ●アット商標に関するお知らせ

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1.弁理士コラム
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●外国出願について

 今年も早いもので残り2ヶ月を残すのみとなりましたが、特許庁の統計速報(平成27年10月13日作成版)によりますと、平成27年1月~8月の国内特許出願は前年比で2.1%減、PCT国際出願は前年比7.0%増という速報結果が出ております。
 そして、ここ10年の統計結果を見てみますと、国内特許出願は23.7%減であるのに対し、PCT国際出願は1.7倍に増大しております。長期的にも国内出願は減少、外国出願は増加の傾向にあります。

 この外国出願について日本からどの国に多く出願されているかを見てみますと、出願件数が多い順に、米国、中国、欧州、韓国、ASEAN6カ国(タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム)、インド、ブラジル等となっております。
 世界の工場である中国への出願件数が多いのは予想通りかと思います。特に中国国内の特許出願件数は92.8万件(2014年)もあり、日本国内出願の3倍近い出願数の規模を誇っております。この中国国内における特許出願のうち、約86%は中国人の出願ですが、外国人の出願で一番多いのは日本からの出願で、日本が積極的に出願をしていることが伺われます。

 今後の日本市場が縮小する可能性があることを考えると、積極的に海外進出を図る必要があり、外国での出願増の傾向が高まるでしょう。
 先日、TPPが大筋合意に至りました。今後ますます輸出・輸入が活発になり、それに伴い外国での権利化の必要性が高まることが予想されます。

 このような状況において、日本の特許庁は様々な施策を準備しております。
 例えば、中小企業等を対象に、国際出願に関する料金を1/3に軽減する制度、外国出願に係る経費の半額を補助する制度、海外模倣品対策のため費用の2/3を補助する制度が準備されており、外国における知的財産活動を援助しております。
 我々特許事務所側としましても、迅速かつ適切な海外での知的財産の権利化および活用のため、少しでもお客様の期待以上のサービスをご提供し、安心して弊所にご依頼を頂けるよう努力していく次第でございます。

 外国の制度はそれぞれ共通点もあるものの、やはり国ごとに異なり複雑です。また、手続きには期限が設けられている場合も多く、期限を過ぎてしまえば権利化が不可能となります。ご不明な点はご遠慮なくご相談いただきますようお願いいたします。

                           弁理士 南瀬 透


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2.知財ニュース
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●小学6年女児、アルミ缶とスチール缶を自動分別するごみ箱で特許取得

 小学6年の女子児童が、投入した空き缶を、磁石の利用でスチール缶とアルミ缶を自動分別するごみ箱を開発し、特許を取得したことが話題となっています。小学生の特許取得は非常に珍しいとのことです。

 この特許「発明の名称:空き缶分別箱」は、昨年の12月8日に出願され、今年の8月14日に特許第5792881号として登録となりました。特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で、特許公報を見ることができます。

 この構造のごみ箱を作ったきっかけは、昨年の夏休みの課題として出された自由研究で、祖父がスーパーを営んでいて、自動販売機のごみ箱のスチール缶とアルミ缶を仕分けするのを見て、着想を得たとのことです。

●特許庁、登録査定となった新しいタイプの商標43件を公表

 特許庁は10月27日、今年4月からスタートした、音や動き、色彩などの新しいタイプの商標について、初めて登録査定となった43件の商標を公表しました。
 今回、登録査定となった43件のタイプ別の件数は、音:21件、動き:16件、位置:5件、ホログラム1件、色彩:0件、となっています。

詳細については、下記のURLをご覧ください。

[URL] http://www.meti.go.jp/press/2015/10/20151027004/20151027004.html



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3.連載 知財講座
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第45回:特許「均等論」

 「均等論」とは、特許発明の技術的範囲には、特許請求の範囲の記載の文言解釈を超えて、当該記載と均等と評価される技術的構成まで含まれるという考え方です。
 均等論は、古くから米国で認められてきた考え方でしたが、日本では、近年、最高裁により認められ(最判平10.2.24「ボールスプライン事件」)、現在では、この判決を基準として、実務が動いています。
 「均等論」が持ち出されるのは、例えば、次のような場合が考えられます。

 事例「我が社Aの持つ特許権Pの技術と殆ど同様の技術を用いて、我が社Aの製品Xの模倣品Yが他社Bにより製造、販売されている。製品Xと模倣品Yとは、何から何まで全く同じではないが、その違いは、重要な部分ではない。我が社Aは特許権Pに基づいてB社の模倣品Yの販売差止めを求めることはできないか?」

 このような場合、B社の模倣品Yが、A社の特許権Pを侵害するものとして、その販売差止めが認められるためには、B社の模倣品Yにて使用されている技術が、A社の特許権Pの効力が及ぶ範囲(技術的範囲)内にあることが必要です。そして、模倣品Yに使用されている技術が「技術的範囲」にあるというためには、原則として、A社の特許権Pに係る「特許請求の範囲」に記載した内容(構成要件)と、模倣品Yに使用されている技術の内容が同一であることが必要です。

 しかしながら、前述の原則論を形式的に貫くとすると、B社のように、他人(A社)の特許権Pに係る技術の内容をほんの一部分変更するだけで、特許権の侵害に該当するとの特許権者(A社)の主張を簡単に免れることが可能となってしまいます。
 そこで、このような問題点を解決するために、特許権Pに係る「特許請求の範囲」に記載された内容と、模倣品Yに使用されている技術の内容とが一部異なっていたとしても、特許権Pと同じ技術的範囲内にあるものと評価する考え方が「均等論」として提唱されることとなりました。

 「均等論」については、否定的な判例や学説も存在しましたが、前述の最高裁判決において、「均等論」を肯定し、これが認められるための5つの基準を示しました。これらの基準を前記事例に当てはめて説明すると下記のようになります。

(1)A社が有する特許権Pに係る技術の構成のうち、B社の模倣品Yで使用されている技術と異なっている部分が、当該特許技術の本質部分でないこと

(2)前述の異なっている部分を、B社の模倣品Yで採用されている構成と置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の効果作用を奏するものであること

(3)前記のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という)が、B社の模倣品Yの製造時の時点において容易に想到することができたものであること

(4)B社の模倣品Yに使われている技術が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一または当業者が容易に推考できたものでないこと

(5)B社の模倣品Yに使われている技術が、特許発明の特許出願手続きにおいて特許請求の範囲から意識的に除外されたものにあたるなどの特段の事情もないこと

 このような最高裁判決の考え方に従えば、前述した5つの基準のすべてを満たす場合には、B社の模倣品Yに使用されている技術は、A社の特許権Pに係る「特許請求の範囲」に記載された構成と均等なものとして、A社の特許権Pに係る技術的範囲に含まれるものと判断され、その結果、B社の模倣品YはA社の特許権Pを侵害するものであるとして、A社は、B社に対して模倣品Yの販売の差止め等を請求することが可能となります。

 なお、特許権の技術的範囲は、特許庁の判定制度を利用して公式的な見解を求めることも可能です。


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4.イベント案内
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●九州知財活用リレーセミナーin佐賀

 特許庁・九州経済産業局の主催で、中小企業を対象に、知的財産を活用した新商品の開発等が企業活動において、いかに重要であるか理解してもらうための戦略的知財活用セミナーが、11月9日佐賀市内で開催されます。参加には事前申し込みが必要です。また、参加は無料です。


 詳細は、下記のURLをご覧ください。
[URL] http://www.kyushu.meti.go.jp/event/1510/151015_1.html


●九州知財活用リレーセミナーin熊本

 特許庁・九州経済産業局の主催で、農産物や加工品等の農業分野における知的財産の活用と権利保護をテーマとした戦略的知財活用セミナーが、11月10日熊本市内で開催されます。参加には事前申し込みが必要です。また、参加は無料です。

詳細は、下記のURLをご覧ください。
[URL] http://www.kyushu.meti.go.jp/event/1510/151015_2.htm


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5.事務所からのお知らせ
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●アット商標に関するお知らせ

(1)売買希望商標の新着情報

 商標ポータルサイト『アット商標』の商標売買フォームで、10月に登録・更新された販売希望商標のご紹介です。詳細は、アット商標トップページの[販売商標一覧へ]よりご確認いただけます。
 興味のある登録商標がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

(新規)
 [商標]Love Pan  [権利範囲]下着
(価格更新)
 [商標]むろうどん(図形) [権利範囲]うどん麺、つゆ、粉等

【アット商標】 http://www.a-shohyo.com/


(2)不具合のお知らせ

 以前からお伝えしておりますように、『アット商標』の問い合わせフォームに不具合があり、ご不便をおかけしております。
 一時はサイトにアクセスできない状況となり、現在でも完全には復旧しておりませんが、商標売買に関するお問い合わせや依頼を複数いただいており、活発に動いております。
 商標売買に関するお問い合わせは、加藤特許事務所 アット商標担当 別府(TEL 092-413-5378)まで、直接お電話ください。
 
 
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