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            「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.39
                        発信日:2014年11月 4日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
 1.所長コラム
  ●弁理士の使命について

 2.知財ニュース
  ●昨年、サムスン電子がマイクロソフトに支払った特許ライセンス料、約10億ドル

 3.連載 知財講座
  ●第39回:特許「拒絶査定不服審判」

 4.イベント案内
  ●知的財産活用事例セミナー
  ●平成26年度海外知的財産活用講座

 5.事務所からのお知らせ
  ●特許庁長官賞受賞記念祝賀会を開催しました
  ●特許法上の救済措置が拡充
  ●売買希望商標の新着情報【アット商標】

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1.所長コラム
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●弁理士の使命について

 今年の4月に弁理士法が一部改正され、新たに弁理士の使命条項が次のように規定されました。

 第1条:弁理士は、知的財産に関する専門家として、知的財産権の適正な保護及び利用の促進その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、もって経済及び産業の発展に資することを使命とする。

 この第1条の改正前は、次のように規定されていました。

 【改正前】第1条:この法律は、弁理士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、工業所有権の適正な保護及び利用の促進等に寄与し、もって経済及び産業の発展に資することを目的とする。

 すなわち、改正前も改正後も、経済および産業の発展に資するという趣旨は同じです。しかし、改正前は、弁理士法の目的を規定するだけです。単に弁理士の業務適正化により、工業所有権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)の保護および利用に寄与することに留まっておりました。

 改正後は、弁理士の使命がより明確になりました。弁理士は、工業所有権という枠組みにとらわれず、より広く、知的財産に関する専門家であることが求められています。知的財産の専門家ということは、これまでの発明、考案、意匠、商標はもちろん、植物の新品種、著作物、商号、商品等表示、営業秘密なども関連してきます。

 また、グローバル化に伴い、知的財産に関する外国での権利化・保護の必要も増加傾向にあります。そうなると、弁理士は、知的財産に関する日本の法律はもちろん、外国の法規・条約にも精通する必要が出てきます。

 このような要請に応えるべく、私は弁理士として自己研鑽していくことが必要であると痛感しております。とはいえ、時の流れは速く、実際上これらの全てに精通することは至難の業と思います。

 自己の得意分野を伸ばすとともに、手薄な分野は日頃からネットワークを強化して能力を補強することで、知的財産を尊重し保護するという社会の期待に応えていきたいと存じます。

 弁理士の使命条項の制定には身の引き締まる重みを感じます。

                           弁理士 南瀬 透

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2.知財ニュース
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●昨年、サムスン電子がマイクロソフトに支払った特許ライセンス料、約10億ドル

 米マイクロソフト(MS)は、韓国サムスン電子に対して、ライセンス料支払い遅れの利息分の支払いを求める訴訟を提訴中で、この訴訟において公開された資料から、サムスン電子が2013年に支払ったAndroid関連の特許ライセンス料が約10億ドル(約1,100億円)に達していたことが明らかになりました。

 MSとサムスン電子は2011年9月、携帯端末に関する特許クロスライセンス契約を締結しており、この契約で、Androidを搭載したスマートフォンやタブレット端末については、サムスン電子がMSに、台数に応じたロイヤリティーを支払うことになっています。

 サムスン電子は、スマートフォン関連の商品で、昨年度約2兆円の営業利益を得ており、この高額のライセンス料を支払っても、まだお釣りがくる勘定になると思います。


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3.連載 知財講座
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第39回:特許「拒絶査定不服審判」

 拒絶査定不服審判は、審査において拒絶査定を受けた者がその査定に不服がある場合に不服申し立てを行う手続です。拒絶査定不服審判の請求期間は、拒絶査定の謄本の送達があった日から3ヶ月以内となっております。

 審判では3人または5人の審判官の合議体により審理が行われ、拒絶査定が妥当でないと判断された場合には拒絶査定を取り消して特許をすべき旨の審決が、拒絶査定が妥当であると判断された場合には審判の請求は成り立たないという旨の審決が出されます。

 また、審判請求時に補正を行った場合には合議体による審理に先立って前置審査が行われます。前置審査では原則として拒絶査定を出した審査官によって再び審査が行われ、審査官が拒絶理由が解消したと判断した場合には前の拒絶査定が取り消されて特許査定となります。

 一方、前置審査によっても審査官が拒絶をすべきと判断した場合には、いよいよ審判官の合議体による審理が開始されます。この際、技術分野によっては前置報告の内容が審尋により送付され、審査官の見解に対して意見の機会が与えられることもあります。審尋に対する回答は必須ではなく、提出せずとも不利に取り扱われることはありませんが、前置報告の内容に対して意見を述べるせっかくの機会ですので回答書の提出をお薦めします。

 なお、審判請求時の特許請求の範囲の補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の限定的減縮(例えば、発明特定事項を下位概念化するもの)、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に限られており、明細書に記載されている事項内であっても特許請求の範囲を補正できない場合があります。

 そのため、このような補正を行いたい場合には分割出願を行う必要があります。分割出願では明細書に記載されている事項内であれば新たな請求項を作成することが可能となります。弊所では、拒絶査定時に審判請求の要否とともに分割出願の要否につき顧客の皆様にお問い合わせをさせて頂いておりますので、ご留意頂ければと存じます。

 ご参考として、昨年の拒絶査定不服審判に関する統計は次の通りです。

 ・拒絶査定不服審判の請求件数:24,644件
 ・その内、前置審査で登録になった件数:12,998件
 ・審判官による審理で登録になった件数:6,726件
 ・拒絶査定不服審判の成功率:80%


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4.イベント案内
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●知的財産活用事例セミナー

 特許庁と九州経済産業局の主催で、地域中小企業を対象に、知的財産に関する「転ばぬ先の杖」として、他社からの警告・訴訟への対応や他社の権利を侵害しないための予防策等を中心としたセミナーが下記の要領で開催されます。参加は無料で、事前申込が必要です。

 ・日時:平成26年11月12日(水)15:00~17:00
 ・場所:北九州市小倉区 西日本総合展示場新館 AIMビル3階311会議室
 ・講師:青山法律事務所代表 弁護士・弁理士 青山 隆徳

 申込書・申込方法等の詳細は、下記のURLよりご覧ください。
[URL] http://www.kyushu.meti.go.jp/event/1410/141015_1.html


●平成26年度海外知的財産活用講座

 工業所有権情報・研修館の主催で、これから海外進出を検討されている中小・ベンチャー企業等の方を対象に、海外でのビジネスを円滑に進めるための知的財産・経営面から見た留意点を中心とした講座が下記の要領で開催されます。参加は無料で、事前申込が必要です。

 ・日時:平成26年11月14日14:00~17:00
 ・場所:福岡市博多区 TKP博多駅前シティセンター・カンファレンス5F

 申込書・申込方法等の詳細は、下記のURLよりご覧ください。
[URL]http://www.jiii.or.jp/kaigai-kouza/kaijyou/fukuoka.htm

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5.事務所からのお知らせ
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●特許庁長官賞受賞記念祝賀会を開催しました

 2014年9月5日に特許庁長官賞(知財功労賞)受賞記念の祝賀会を開催し、200名近い方にご出席いただきました。
 祝賀会の模様は、下記のURL(加藤特許事務所TV)にて公開しております。興味のある方はご覧ください。

[URL] http://cowtv2.jp/c3/kato-pat-tv/

●特許法上の救済措置が拡充

 今回の改正では、災害等のやむを得ない事由が生じた場合には、手続期間を延長する救済措置が施され、制度利用者の利便性の向上が図られております。以下、新たに受けられる救済措置の例をご紹介します。

<優先権主張に係る後の出願期間の延長>
 優先権主張制度とは、先の出願を基礎とした優先権を主張して後の出願する場合、審査における新規性等の判断を先の出願時を基準に行う制度です。現行法では、後の出願を、先の出願から一年以内にする必要があります。

 今回の改正により、正当な理由があるときは、先の出願から一年を経過した後でも所定期間であれば、優先権を主張して後の出願をすることができるようになります。

<特許出願審査の請求期間の徒過後の手続き>
 特許出願審査の請求とは、出願した発明に特許性があるか審査を受けるための手続きであり、特許権取得のために必要な手続きです。

 現行法では、特許出願の日から三年以内に特許出願審査の請求をする必要があります。
 今回の改正により、正当な理由があるときは、その請求期間を徒過した後、一定の期間内に限り当該請求をすることができるようになります。

 このように、災害や重篤な病気等のやむを得ない事由により、所定期間内に手続きができなかったときでも、救済措置を受けられる場合があります。

 また、例示した上記手続き以外についても、手続期間の延長が可能になる場合がありますので、かかる際には、ご相談ください。

●売買希望商標の新着情報【アット商標】

 商標ポータルサイト『アット商標』の商標売買フォームに10月に登録された販売希望商標のご紹介です。詳細は、アット商標トップページの[販売商標一覧へ]よりご確認いただけます。
 興味のある登録商標がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

[商標]グレビュー  [権利範囲]自動車並びにその部品及び附属品
[商標]レボーテ   [権利範囲]乳製品
[商標]グレビュー  [権利範囲]旅行の主催 等
[商標]アフターイヴ [権利範囲]せっけん類,香料類,化粧品
[商標]キャラメイク [権利範囲]美容,理容

【アット商標】 http://www.a-shohyo.com/

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