◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆             「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.37
                        発信日:2014年 7月 2日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
 1.所長コラム
  ●最近の知的財産権を巡る我が国の動き

 2.知財ニュース
  ●特許庁、米国との間で特許に関する審査協力強化で合意
  ●ホンダ「スーパーカブ」の形状、乗り物として初の立体商標登録に

 3.連載 知財講座
  ●第37回:特許「情報提供」

4.イベント案内
  ●平成26年度知的財産権制度説明会(初心者向け)開催

 5.事務所からのお知らせ
  ●外国出願にかかる費用の半額の助成
  ●売買希望の新着商標(アット商標)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 1.所長コラム ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●最近の知的財産権を巡る我が国の動き

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は、各国の利害関係の調整の難しさに加え米国の指導力の翳りもあり今年中の締結が危ぶまれている状況になってきておりますが、交渉テーマでは農業問題と同様に知的財産権を巡る攻防がTPP交渉の鍵となっているのはご高承の通りです。中でも、特許が切れた薬と同じ成分を使って作るジェネリック医薬品が絡む新薬の特許期間やミッキーマウスに代表される著作権の保護期間をどうするかで、米国とアジア諸国との溝がなかなか埋まらない状況です

。  我が国では、このTPP交渉を視野に入れながら知的財産権にかかる法律の改正が進められており、先の通常国会での議論を経て5月14日に特許法等の改正法が公布されました。

 先ず、特許法改正では、特許付与後の異議申立て制度が10年ぶりに復活します。日本が異議申立て制度を廃止したのは、当時特許付与が遅れるとの米国からの強い圧力があったことが一因でしたが、昨年米国が先願主義に移行すると共に異議申立て制度を採用したこともあり、特許権の早期安定化の為に見直しがなされました。

 次に、意匠法改正では、複数国に意匠を一括出願するための規定の整備がなされます。これは、特許や商標と同じく複数国への一括出願を可能とするジュネーブ改正協定への加盟(加入に向け準備中)により、出願人のコスト低減を企図したものです。

 また、商標法改正では、企業イメージを表す短いメロデイや効果音、企業のイメージカラー等が保護対象となります。これらは欧米では既に商標登録が認められており、我が国でも企業イメージ戦略に資することが期待されています。また、地域団体商標の登録主体が拡大され、商工会、商工会議所及びNPO法人も登録が可能となります。地域ブランドの更なる普及・展開に繋がることが期待されています。

 更に、上記に加え政府は、事故や病気で失った人体機能を取り戻す再生医療の特許期間を最長25年に延長する方針を固めており、今秋には延長を正式に決めたいとの意向です。

 ところで、米国アップル社と韓国サムソン社の携帯端末を巡る特許訴訟が世界中で繰り広げられていますが、知的財産高等裁判所が審理した「不可欠な中核特許(標準規格必須特許: FRAND特許)」に関する両社の訴訟事件において、一般第三者に意見を求めるということが初めて行われました(1月23日)。米国では従来から行われている手続きで アミカスブリーフ(Amicus Brief)制度と言われていますが、広く専門家の衆知を集めるということは、我が国の知的財産裁判に新しい風を吹き込むものとして歓迎したいと思うところです。

 上記のように、知的財産権を巡る世界はダイナミックに動いています。弊所では、かかる国内外の状況を十分に踏まえ、皆様方の国内、海外の出願、権利取得とその活用のお手伝いをさせて頂きます。


                        副所長 弁理士 久保山 隆


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2.知財ニュース ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●特許庁、米国との間で特許に関する審査協力強化で合意

特許庁は6月6日、米国特許商標庁との間で、2015年4月以降に、米国が受理したPCT国際特許出願の一部の国際調査・国際予備審査を日本が行うこと、日米の特許審査官が協働して審査を実施することで審査の質の向上を図ること、などの特許審査協力の試行開始に共同で取り組むことで、基本的に合意したと発表しました。

 特許庁は、これらの試行が実現することにより、日米間の審査実務に係る制度や運用の調和に向けた議論の進展が期待され、また、このような協力を通じて、制度や運用の調和が進むことにより、日米の出願人にとって日米両国での権利取得の予見性が高まるものと考えられるとしています。

 詳細は、下記のURLをご覧ください。
[URL] http://www.meti.go.jp/press/2014/06/20140606005/20140606005.html

●ホンダ「スーパーカブ」の形状、乗り物として初の立体商標登録に

 ホンダは5月26日、同社の二輪自動車「スーパーカブ」の形状が特許庁から立体商標として登録されたと発表しました。二輪だけでなく自動車業界としても、乗り物自体の形状が立体商標登録されるのは日本で初めてのことで、工業製品全般としても珍しい事例と言えます。

 ホンダの発表内容は、下記のURLをご覧ください。
[URL] http://www.honda.co.jp/news/2014/c140526.html?from=topbanner

――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3.連載 知財講座 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 第37回:特許「情報提供」

 例えば、ライバル会社の出願公開公報を見つけたとき、何とかして権利化を阻止したいと考えたとします。このとき、情報提供の制度を利用することで権利化を阻止できる場合があります。

 「情報提供」とは、出願公開された他人の発明が特許されるのを阻止するために、特許庁(審査官)に対し、情報を提供することをいいます。

 情報としては、その発明に新規性や進歩性がないことを明らかにする文献(刊行物や書類その他の資料)を提出することができます。例えば、その出願の日より前の日付で発表された論文であって、その発明と同じ内容を述べている論文を提出することができます。但し、提出できるのは刊行物等の「書類」だけであり、「書類」に該当しないもの、例えば、ビデオテープやCD-ROM、USBメモリーなどの提出は認められていません。

 具体的な手続きは、「刊行物等提出書」という書類を特許庁に提出することにより行います。「刊行物等提出書」の提出に際しては、特許庁に印紙を納付する必要はありません。

 情報提供は、出願公開がされた特許出願に対してすることができます。

 また、情報提供は誰でも行うことができます。「刊行物等提出書」には「提出者」を記載する欄があるのですが、住所や氏名を省略して提出することもできます。つまり、提出者が誰であるかを知られることなく提出することができます。したがって、提出者として名前を出すことにより、特許出願人との関係悪化が気になるような場合は、匿名で提出することができます。

 では、特許庁に情報提供をした場合、特許庁ではどのような手続が行われるでしょうか。特許庁の審査官は、提出された書類を検討した結果、その特許出願について拒絶の理由があると判断すれば、特許出願人に対して拒絶の理由を通知します。但し、提出された資料を参考にするかどうかは審査官の裁量ですので、提出した刊行物が採用されなくても、そのことについて文句は言えません。

 なお、既に特許されたものに瑕疵がある場合には、「無効審判」を請求することで一旦発生した権利を無効にする手段が残されています。また近時の法改正により、特許異議申立ての手段も利用できるようになります。

 以上のように、ライバル会社の特許を阻止・無効等にするための手段が用意されています。このような手段を有効活用するためには、日頃からライバル会社の出願等を監視することが肝要であると考えられます。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4.イベント案内 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●平成26年度知的財産権制度説明会(初心者向け)開催

 特許庁は、6月下旬から10月上旬にかけて、全都道府県で、これから知的財産権制度を学びたい方、知財部門に新しく配属された方などの初心者の方を対象に、知的財産権制度説明会を開催します。
 参加は事前の申込みが必要です。参加費は無料ですので、この機会にぜひご参加ください。九州・沖縄での開催日は、次の通りです。

福岡:9/2,10/7、佐賀:9/11、長崎:7/28、熊本:7/3、大分:8/19、宮崎:8/4、鹿児島:7/9、沖縄:8/28

 詳細は、下記のURLをご覧ください。

[URL]
http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/ibento2/h26_beginner.htm

――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 5.事務所からのお知らせ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●外国出願にかかる費用の半額の助成

 特許庁は、平成26年度も中小企業の戦略的な外国出願を促進するため、外国への事業展開等を計画している中小企業に対して外国出願にかかる費用の半額を助成します。
 本年度より新たに全国実施機関として独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)を補助事業者に加え、全ての都道府県で支援が受けられるようになっています。
 現在応募中、又は今後応募予定の機関は次の通りです。福岡県、佐賀県、鹿児島県は、既に第1次応募が終了していますので、全国実施機関(ジェトロ)に応募されてください。

【全国実施機関】・・・公募予定
 〔独立行政法人日本貿易振興機構〕
お問合わせ先:ジェトロ知的財産課 外国出願デスク
   (担当者:斎藤・金森・仮屋・小原)TEL:03-3582-5642
  公募予定期間:平成26年7月25日(金)~8月20日(水)17:00厳守
  http://www.jetro.go.jp/news/announcement/20140623825-news

 〔公益財団法人くまもと産業支援財団〕
  お問合わせ先:事業革新支援室 TEL:096-289-2438
  申請受付期間:平成26年6月24日(火)~7月24日(木)17:00必着
  http://www.kmt-ti.or.jp/contents.cfm?id=372

<全国の実施機関毎の募集状況は、下記のURLをご覧下さい>
  http://www.jpo.go.jp/sesaku/shien_gaikokusyutugan.htm

●売買希望の新着商標(アット商標)

 商標ポータルサイト『アット商標』の商標売買フォームに5,6月に登録された販売希望商標のご紹介です。登録商標や権利範囲の詳細は、『アット商標』トップページの『販売商標一覧へ』ボタンよりご確認いただけます。
 興味のある登録商標がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

[商標]図形(天職成就)       … お守り
[商標]天職(標準文字)       … お守り
[商標]天職成就(標準文字)     … 電子出版物、印刷物
[商標]むろうどん          … うどん麺、つゆ、粉等
[商標]UN\CORPORATION\ソイコラーゲンティー … 茶
[商標]Tea’s Court    … 茶,菓子及びパン
[商標]T’C\生サブレ       … サブレ
[商標]プーアール麗爽茶(標準文字) … 茶
[商標]さえ/茶恵          … せっけん類

【アット商標】 http://www.a-shohyo.com/

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