◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆             「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.32
                        発信日:2013年 9月 2日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
 1.所長コラム
  ●星新一賞創設記念イベントに参加して思うこと

 2.知財ニュース
  ●Google社、ヘッドマウント型デバイスで視線を追跡する米国特許を取得

 3.連載 知財講座
  ●第32回:特許「先願範囲の拡大について(特許法第29条の2)」

 4.イベント案内
  ●平成25年度実務者向け知的財産権制度説明会開催について

 5.事務所からのお知らせ
  ●欧州知的財産に関する資料配布


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 1.所長コラム ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●星新一賞創設記念イベントに参加して思うこと

 星新一賞( http://hoshiaward.nikkei.co.jp/ )が創設されたことを記念して、7月27日(土)、28日(日)の両日、世田谷文学館において、子供向けのイベントが開催された。「1日でキミもSF作家に!? 宇宙のヒミツと物語のつくり方をまなぼう。」というものである。星新一賞には中学生以下を対象とするジュニア部門があり、その応募啓発のため、「物語のつくり方をまなぼう」という催しがあり、私はモデレータの一人として参加した。

 特に後半は、星新一の唯一の弟子であるSF作家の江坂遊氏が主体となって企画したもので、内容は以下のものである。

 参加者は小学校5年~中学校3年まで、2日間とも40名程度であった。5班に分かれ、各班にモデレータが各1名付く。
 最初にSF小説の中でもショート・ショートとはどういうものかという説明が江坂氏からあり、それからワークショップに入る。ワークショップでは、キーワードをたくさん用意し、それからその組み合わせを変えて、ありえない組み合わせのキーワードを考え出す。さらにそのキーワードについて、連想するワードを次から次へと考えだしポストイットに書き出す。それを白い大きな紙に貼りながら、グループ内で議論をして、筋を考えていく。結末の落ちまで考えショート・ショートの全体のストーリーを考え、最後に各班が発表し、皆の挙手によって、最優秀賞を決めていく。

 時間の関係で、文章そのものを作るところまでは行かなかったが、こうやって物語を作るのだよという入口のところはわかってもらえたと思う。

 普段は、社会人を相手に研究開発テーマ探索のようなことを行っているが、発想の豊かさという点では、小学生、中学生の方がはるかに自由である。学年が上がるにつれていろいろな知識を付けていくわけだが、同時に制約もたくさん身につけ、発想の自由さがなくなっていく。

 1年前のとびうめ便りで、企業と大学の共同研究で画期的な成果というのが必ずしも出ていないのではないか、キャッチアップ体質からなかなか脱却できないでいるのではないか、企業、大学、ともにイノベーティブなものを作る体制になっていないのではないかということを書いたが、日本をイノベーティブに変えようと思えば、小学生からそのような体制を作っていかなければならないのではないかと考えている。

 特許事務所は、発明を権利化することが主な仕事であるが、その発明の源泉たるアイデア創出についても、今後、できるだけの貢献をしていくことが必要であると考えている。

             奈良先端科学技術大学院大学 知的財産本部長 教授
                         客員 弁理士 久保 浩三

――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2.知財ニュース ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●Google社、ヘッドマウント型デバイスで視線を追跡する米国特許を取得

 米国のGoogle社は、今年8月ヘッドマウント型デバイス(HMD)で視線を追跡する米国特許を取得しました(米国特許8,510,166)。

 「Gaze tracking system」(注視追跡システム)と題されたこの特許は、HMDを用いて人の視線の先にある対象物を認識する仕組みが示されており、例えば、広告システムの応用例として、人が視線を移動させて注視した対象物が、広告であると認識したとき、その広告に対して、広告料金を設定することを挙げています。

 この米国特許を通じて、Google社が、将来HMDを活用してどのようなビジネスを展開するのかの一端が垣間見られます。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3.連載 知財講座 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 第32回:特許「先願範囲の拡大について(特許法第29条の2)」

 特許制度は新規な発明を公開した代償として独占権を付与するものであり、世の中ですでに公知となり、新規性を失った発明は特許を受けることができません。

 一方、特許出願の明細書等に記載された発明は、その出願公開(通常出願から1年6か月後)まで秘密状態であり公知になっていません(特許出願以外で公知になった場合を除く)。

 それでは、特許出願から出願公開までに、第三者が特許出願を行った場合、第三者は特許を受けることができるでしょうか?

 このような場合、第三者の特許出願は、先の特許出願の出願公開(又は特許公報発行)を条件に、以下に説明する特許法第29条の2(拡大された先願)の規定により、特許を受けることができません。

 明細書又は図面に記載されている発明は、特許請求の範囲以外に記載されていても、出願公開によりその内容は公表されます。そのため、先願の出願公開前に出願された後願であっても、その発明が先願の明細書又は図面に記載された発明と同一である場合には、出願公開をしても新しい技術を何ら公開するものになりません。

 このような発明に特許を付与することは、新しい発明の公表の代償として発明を保護しようとする特許制度の趣旨からみて妥当ではないので、後願である第三者の出願を拒絶すべきものとしました。

 なお、特許法第29条の2の規定は、後願の出願時において、先願と後願との「発明者が同一」又は「出願人が同一」の場合には適用がありません。そのため、「発明者が同一」又は「出願人が同一」の場合には、先願の特許出願後に、明細書又は図面のみに記載された発明についても、別途特許出願を行い、その発明について権利化を図ることが可能です。

 但し、上述の「発明者が同一」又は「出願人が同一」は、それぞれ完全に同一である必要があります。後願において、発明者や出願人が追加される場合には、適用外になりますのでご注意ください。

 特許法第29条の2の規定における発明者又は出願人の同一性は、判断が難しい点もありますので、判断に迷われるような場合はお気軽にご相談下さい。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4.イベント案内 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●平成25年度実務者向け知的財産権制度説明会開催について

 特許庁は、知的財産権の業務に携わっている実務者の方を対象に、制度の円滑な運用を図るため、実務上必要な知識の習得を目的とした実務者向け説明会を全国の主要都市21ヶ所で開催します。

 本説明会では特許・意匠・商標の審査基準やその運用、審判制度の運用等について、特許庁職員が解説します。参加の場合は、事前申込が必要で、参加は無料です。九州・沖縄での開催日は、次の通りです。

 福岡市:10/3,11/7,12/3,12/10
 熊本市:9/18,10/17
 那覇市:11/21

 詳細は、下記のURLよりご覧いただけます。
URL: http://www.jiii.or.jp/h25_jitsumusya/index.html


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4.事務所からのお知らせ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●欧州知的財産に関する資料配布

 最近、欧州の提携事務所代理人の来訪があり、欧州統一特許制度・統一特許裁判所、および欧州拡張サーチレポート(EESR,SESR)等につき説明を受けました。

 当日のプレゼン資料(英語)については、皆様へ配布する許可を得ております。

 若し、必要な方がおられましたら、mail@kato-pat.jp へご一報下さい。


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