◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆             「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.30
                        発信日:2013年 5月 1日
                        発信者:加藤特許事務所 ◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆ ★ 目 次 ★
 1.所長コラム
  ●最近の知的財産権を巡る世界の動き

 2.知財ニュース
  ●2012年国際特許出願は、1位ZTE(中国)、2位パナソニック、3位シャープ
  ●「事業戦略対応まとめ審査」の開始

 3.連載 知財講座
  ●第30回:中国での商標問題(Part2)

 4.事務所からのお知らせ
  ●中国・韓国の提携事務所代理人にご来所いただきました(中国商標の資料配布可)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 1.所長コラム ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●最近の知的財産権を巡る世界の動き

 今回は、米国、欧州、中国および韓国の知的財産権を巡るホットな話題をお送り致します。

<米国の先願主義への移行>

 オバマ米大統領が、一昨年の9月16日に米特許法改革法案(AIA)に署名し、約半世紀ぶりに米国特許制度が大幅に刷新されることになったことは既にご報告したところです。
 その根幹となる先発明主義からの先願主義への移行がこの3月16日に発効しました。このことにより、世界の特許制度がすべて先願主義になり国際的な特許制度の調和が大きく前進するものと思われます。

 但し、米国の先願主義は、厳密には先公表型先願主義であり、新規性喪失の例外規定(グレース・ピリオド)も併せ他の国とは異なる部分がありますので留意が必要です。

<欧州の統一特許への動き>

 欧州統一特許制度の創設については、1975年に署名されたものの未発効である共同体特許条約(CPC)等、約40年に亘り検討が進められてきましたが、漸くEU加盟国25ヵ国(イタリア及びスペインを除く)による欧州統一特許制度および統一特許裁判制度が2014年中にスタートする見込みとなりました。

 この制度は、既存の欧州特許庁(EPO)による出願手続きの制度の枠組みを利用し、統一特許取得の選択を可能とするもので、得られた特許権は不可分の欧州統一特許(UP)として成立します。また、欧州統一特許の侵害、無効訴訟裁判は新設される統一特許裁判所により行われることになります。

<中国の出願状況と法改正>

 ご存知のように中国の近年における特許、商標等の出願件数の増加は凄まじく、一昨年米国を抜いて世界一の特許出願大国となりましたが、昨年も特許出願が62.5万件(対前年度比24%増)と大幅な伸びを示しました。中国国家知識産権局(SIPO)は、2015年には特許・実用新案・意匠出願が合わせて250万件に達すると予想しています。

 一方、中国では第4次専利法改正が進められており、昨年8月SIPOが改正案を公表しました。この改正案では損害賠償額の立証負担の軽減や故意侵害に対する3倍賠償規定が盛り込まれており、中国がよりプロパテントの方向性を打ち出したものとなっています。

<韓国のFTA締結に伴う法改正>

 韓国では米国との二国間による自由貿易協定(FTA)の締結に伴って特許法等が改正され、FTAが発効した昨年3月15日に施行されました。
 この改正により、グレース・ピリオドが6ヶ月から12ヶ月に延長され、審査が遅延した場合は特許権の存続期間の延長が認められることになり、商標分野でも音・におい等の商標の登録が新たに可能となりました。
 また、医薬品の販売許可の際の特許確認制度(韓国版ハッチ・ワックスマン法)が創設され、後発品(ジェネリック品)の市場参入における特許侵害予防措置の規定が設けられました。
 更に、韓国では特許法条約(PLT)に準拠した国際的なハーモナイセーションに向け特許法改正への取組みがなされています。

 上記のように、知的財産を巡る世界はダイナミックに動いています。弊所では、かかる海外の状況を十分に踏まえ、皆様方の外国への出願、権利取得とその活用のお手伝いをさせて頂きます。

                        副所長 弁理士 久保山 隆


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2.知財ニュース ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●2012年国際特許出願は、1位ZTE(中国)、2位パナソニック、3位シャープ

 WIPO(世界知的所有権機関)は3月19日、特許協力条約(PCT)に基づく2012年の国際特許出願状況を発表しました。出願総数は194,400件で、前年の181,900件より6.6%増加しています。

 国別では、1位米国 51,207件(5.4%増)、2位日本 43,660件(12.7%増)、3位ドイツ 18,855(1.5%増)、4位中国 18,627件(13.5%増)、5位 韓国 11,848件(13.4%増)となっています。

 また、企業別では、1位ZTE(中興通訊、中国)3,906件(28%増)、2位パナソニック2,951件(17%増)、3位シャープ 2,001件(12%増)、4位ファーウェイ(華為技術、中国)1,831件(2%減)、5位ロバート・ボッシュ(ドイツ)1,775件(14%増)となり、以下トヨタ自動車、クアルコム(米国)、シーメンス(ドイツ)と続いています。概して、中国、日本の企業の健闘が目立ちます。

●「事業戦略対応まとめ審査」の開始

 特許庁は、3月29日、知的財産の包括的な取得を支援するため、複数の知的財産(特許・意匠・商標)を事業展開の時期に合わせてまとめて審査・権利化する「事業戦略対応まとめ審査」を本年4月より開始することを発表しました。

 例えば、電気自動車などは、車体構造・電池・製造・ソフトウェアなど複数の技術のうえに成り立ち、それらに関連する特許も数十に及んでいる場合があり、これまではそれぞれの分野の担当審査部にて別々に審査を行っていましたが、「まとめ審査」では各分野の審査官からなるチームを結成し、事業に必要な特許等を適時にかつ網羅的に取得できるようにすることを目指しています。これにより、新製品の発売や新規事業への参入等の事業戦略にあわせた権利化が期待されます。

 詳細は、下記のURLよりご覧ください。
URL: http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/rireki/what.htm

――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3.連載 知財講座 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 第30回:中国での商標問題(Part2)

 中国の商標問題については、第23回の知財講座(中国での商標問題)に掲載しましたように、外国の地名や著名な商標の中国内第三者による先取り登録、模倣品や無断使用による知的財産権の侵害等が大きな問題となっています。

 これに対して、2012年12月24日、中国商標法の改正案が、全国人民代表大会常務委員会に提出されました。本改正では、悪意をもった商標の模倣や使用、または商標登録などを厳しく規制する方針です。今回の知財講座では、この中国改正商標法の主な内容を[1]~[3]項目に分けてご説明します。

[1]商標登録出願の簡便化

・現在、登録の対象となる商標は、日本と同じ「文字」、「図形」、「立体商標」であるが、これに加えて、「音」、「単一色」を保護対象とする。
・現行法は一出願一区分(一つの出願で指定できる指定商品
・指定役務は一区分のみ)であるが、日本と同じく一出願多区分による商標登録が可能となる。
・現行法では、拒絶理由がある場合は即拒絶査定となるため、審判を請求するか再度出願し直す必要があったが、日本と同じような審査意見書の制度の導入により、説明や修正を行う機会が与えられる。

[2]悪意のある先取り登録、著名ブランドの無断使用等の不正競争行為の抑制

・悪意のある商標の先取り登録を禁止するために、悪意のある出願に対する特別な規制条項を新設予定。
・偽ブランドの侵害行為に対する保護制度をより明確化し、広告や宣伝中に偽ブランドを使用することを禁止する予定。

[3]商標権侵害行為に対する処罰の強化

・許可なく他人の商標を屋号や商品名に使用すること、及び、商標権侵害行為を援助することを商標権侵害行為とする。
・損害賠償額の認定が困難な場合、現行法では50万元となっている法定賠償額を100万元に引き上げる。
・商標権の侵害行為を2回以上行った場合、極力重く処罰する。

 未だ具体的な内容が示されていない部分もありますが、今回の改正は、中国で多発する商標権侵害等の問題を解消するための大きな取り組みといえます。

 現在、中国は輸出入ともに日本最大の貿易相手国であり、知的財産権に関して動向を注目すべき国の一つです。今後も、中国の知財に関して進展がありましたら、本メルマガにてお知らせいたします。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4.事務所からのお知らせ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●中国・韓国の提携事務所代理人にご来所いただきました(中国商標の資料配布可)

 最近、中国と韓国から提携事務所代理人の来訪があり、両国の法改正やトピックスにつき説明を受けました。
 その中で、上海専利商標事務所の商標に関するプレゼン資料(日本語)については、皆様へ配布する許可を得ております。必要な方がおられましたら、mail@kato-pat.jpまでご一報下さい。


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