◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆             「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.29
                        発信日:2013年 3月 1日
                        発信者:加藤特許事務所 ◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆  大宰府市の大宰府天満宮で1月22日、御神木「飛梅」の2輪が開花しました。今年は、平年並みですが、昨年より半月ほど早いとのことです。現在の梅の開花状況は、御神木「飛梅」が満開、境内の梅が見頃です。
 皆様、出向かれて、芳しい梅の香りに包まれてはいかがでしょうか。

★ 目 次 ★
 1.所長コラム
  ●「面白く」なかった「面白い恋人」訴訟和解

 2.知財ニュース
  ●オムロンヘルスケア、体重計の意匠権侵害でタニタを提訴
  ●ブリヂストン、中国での商標権侵害訴訟で現地企業に勝訴確定

 3.連載 知財講座
  ●第29回:種苗法

 4.イベント案内
  ●中小企業の韓国展開における知的財産戦略支援セミナー

 5.事務所からのお知らせ
  ●知的財産権入門セミナーの資料公開のお知らせ
  ●売買希望の新着商標(アット商標)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 1.所長コラム ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●「面白く」なかった「面白い恋人」訴訟和解

 北海道土産として人気がある菓子「白い恋人」を製造販売する石屋製菓(札幌市)と吉本興業(大阪市)との間で和解が成立したという。

 この事件は、石屋製菓が「面白い恋人」の名称で菓子を販売していた吉本興業を商標権侵害で訴えていたものである。報道によれば、「面白い恋人」の商品名はそのまま、パッケージのデザインは変更する、販売地域は関西のみ、という条件付きの和解ということである(賠償金はなし)。

 何となく、肩すかしを食らったと思うのは私だけではないと思いますが・・・。吉本興業はもっと頑張って、ピントの外れた主張をして世間を楽しませて欲しかった。どうも、吉本興業はさすがに訴訟ではマジメにやったみたいである。いかに訴訟とは言え、あの吉本興業がマジメな顔して頑張ってもらっても面白くないのである。せっかく、「面白い恋人」という話題性抜群のネーミングだったのに、結末は「面白く」なかった。

 この業界に身を置く人間としても、司法がどのような判断を下すのか、かなりの関心があった。「面白い恋人」は「白い恋人」のパロディであることは明らかであるにもかかわらず、商標の類似判断に従うと、両者は類似しない(「面白い」と「白い」は類似の関係にない)。

 かと言って、このケースを商標権侵害ではないとするのは常識的に考えておかしいから、司法がどのような理屈を付けるのか、関心を持って見守っていたものの、司法の判断は示されずに終わった。たぶん、司法も安心したことでしょう。なかなか難しいケースでしたから。

 ちなみに、博多にも「赤い恋人」というのがあるらしい(たしか、明太子の関連商品だったと思います)。これも「白い恋人」のパクリだとすぐにわかるけど、「面白い恋人」ほどの面白さはありません。

 「博多」で思い出しました・・・「魏志倭人伝」を。「邪馬台国」の名前が出てくる4、5世紀頃の中国の書物です。

 「邪馬台」は「ヤマタイ」と呼ばれているが、これはオカシイと言わざるを得ません。「ヤマタイ」は現在の読み方だからです。
 「邪馬台」をその書物が書かれた時代の中国語(つまり、古音)で読まないとオカシイのです。「邪馬台」を古音で読むとどうなるか・・・・カタカナでは正確には表記できませんが、「ヤマド」あるいは「ヤマデュ」となる。となれば、「邪馬台国」が後の「大和朝廷」の前身であったことはまず間違いのないところでしょう。

 もう一つ、「魏志倭人伝」に「好古都国」というのが出てきます。「好古都」は「コウコト」と読まれていますが、こんな読み方をするから、「好古都国」がどこにあったのか、全然わからなくなるわけです。「好古都」を古音で読むとどういう読み方になるか、想像が付きますか?

 たぶん、初めて聞かれる方は驚かれるんじゃないかと思います。「好古都」は古音では「ホカタ」と読みます。この「好古都国」が現在の日本のどこにあったのか、一目瞭然ではないですか。

                         副所長 弁理士 天野 広


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2.知財ニュース ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●オムロンヘルスケアが、体重計の意匠権侵害でタニタを提訴

 オムロンヘルスケアが、自社の体重計の意匠権を侵害されたとして、タニタに対して対象製品の製造・販売差止めなどを求める訴訟を東京地裁に提起していることが、同地裁で1月31日、第1回口頭弁論が開催されて明らかになった。

 オムロンヘルスケアの意匠権は、2011年9月に発売した製品のデザインについて、意匠出願し、同年9月に登録になったものです。(意匠登録第1425652号/第1425945号)
 両社の製品はいずれも、表面にガラス板を使用し、足をのせる場所に片足2カ所ずつ、測定のために電極部があり、中央部にスイッチと液晶表示板が配置されています。両社の製品外観は、下記のURLよりご参照ください。
 両社の製品は似ている?今後の判決が注目されます。

URL: http://business-news.doorblog.jp/archives/22996397.html

●ブリヂストン、中国での商標権侵害訴訟で現地企業に勝訴確定

 ブリヂストンは、同社の登録商標「BRIDGESTONE」に類似した「GEMSTONE」を表示したタイヤの生産・販売している中国の広州市宝力輪胎有限公司(宝力タイヤ)に対して商標権侵害で提訴していた訴訟で、一審での同社勝訴判決の後、宝力タイヤが天津市第2中級人民法院に控訴していたが、2013年1月に控訴が棄却され、同社の勝訴が確定したと、2月1日に発表しました。

 宝力タイヤには、今後「GEMSTONE」を表示したタイヤの生産・販売の停止及び損害賠償金の支払いなどが命じられようとしています。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3.連載 知財講座 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 第29回:種苗法

 新しい品種の農作物は、品種のかけ合わせや、突然変異を起こさせるなど、日夜行われている研究の成果として得られます。ご存知の方も多いかと思いますが、種苗法も知的財産権に関する法律の一つで、新品種の保護のための品種登録に関する制度、指定種苗の表示に関する規制等について定められた法律です。

 この法律によって、品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図り、農林水産業が発展することを目的としています。登録された植物の新品種について与えられる権利は「育成者権」と呼ばれます。

 種苗法が保護しようとする、対象は、「植物の品種」です。具体的に、広く知られている品種としては、ばれいしょの「男爵」、イチゴの「とちおとめ」、梨の「幸水」、米の「コシヒカリ」など、非常に多くの事例が挙げられます。

 この種苗法では、新品種の登録要件として、「区別性」、「均一性」、「安定性」等が求められ、外国にて登録を求める場合「優先権」等の制度があります。また、「品種の名称」が適切であることも求められています。

 新しく開発された新品種等の植物保護には、種苗法のみではなく他の知的財産権との関係もあります。例えば、種苗法で保護しようとする品種の権利と特許権等で保護しようとする品種の権利の関係や、種苗法上の品種の名称と商標法上の名称の関係のようなものです。

 先ほど、一部例示した新しい品種の登録要件やその出願手続き等の制度、その権利範囲は、特許法の登録要件と考え方として類似する部分もありますが、全く異なる部分もあります。さらに、品種の枠を超える植物や植物の増殖方法、DNAのような遺伝子等の場合は、種苗法では十分保護されず、特許権で保護されるケースがあります。

 また、品種登録された種苗には、品種名称が付与されます。しかし、品種の名称と思っているものが必ずしも種苗法で登録された品種名称ではないことがあります。

 例えば、有名なイチゴの品種の一つである「あまおう」は、種苗法上の品種名称ではなく(品種の名称は福岡S6号です)、商標法上の登録を受けた登録商標です。

 品種名称の使用は、種苗法上の制限がされていますが、商標法の規定によりその品種の種苗や類似する商品等についてはたとえ育成者権を有する人であっても、商標権を取得することができません。

 種苗法の侵害の立証は手間がかかることがあり、商標権の侵害として立証する方が早いことがあります。また、商標法の場合、適切な商標として登録され使用し続ければ半永久的にその名称を使用することができます。この期間の長さといった点等からは、商標としての登録を検討することも必要になります。

 しかし、必ずしも、商標権としての登録を行えばよいとはいえず、商標の場合、指定商品、指定役務との関係や、その商標権者に誰がなるか(品種に関する知財の活用は、地域や共同体で活用することが重要です)といった点の検討が重要になってきます。

 良いものを作り、販売努力によって社会的な信用を得ても、それらのもの、信用を簡単に真似されてしまうと、そこから利益をあげ、さらによいものを作り、販売しようとすることができなくなってしまう点では、農作物等の新品種についても他の工業製品等と同じです。


 これまで特許事務所が種苗法の保護に関する手続きを直接行わせていただくケースは多くありませんでしたが、農産業の6次産業化等の必要性が議論され、あらゆるモノ、サービスが国際的な競争の中にある現在、植物等の農作物の保護についても、種苗法も含めた知的財産権との関係を把握し、適切な保護の在り方を、検討し、提案させていただきたいと考えております。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4.イベント案内 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●中国商標の小売及び卸売役務の新設について

 九州経済産業局は、今まで数多くの企業の海外展開支援を行ってきている講師を招き、事業の韓国展開における知的財産の活用方策、トラブル事例及び予防策等を紹介するセミナーを開催します。韓国への展開を考えている中小企業の方は、是非ご参加ください。

 開催日は3月8日(福岡市)、参加は無料で、事前申込が必要です。
 詳細は、下記のURLをご覧ください。

URL: http://www.kyushu.meti.go.jp/event/1302/130220.html


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 5.事務所からのお知らせ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●知的財産権入門セミナーの資料公開のお知らせ
 2013年1月28日、福岡商工会議所にて知的財産権入門セミナーが開催され、『コンテンツビジネスと知的財産権』を題材として、加藤特許事務所代表の加藤が講演いたしました。
本セミナーでは、中小企業等がコンテンツビジネスを展開していくうえで必要となる契約の基礎知識や秘密保持契約など、知的財産に関する契約の注意点等について、事例を交えながらお伝えしました。

 セミナー資料(PDF)を下記URLよりご覧いただけますので、興味のある方は是非ご覧ください。

URL: http://www.kato-pat.jp/pdf/contents_business.pdf

●売買希望の新着商標(アット商標)
 商標ポータルサイト『アット商標』の商標売買フォームに1月に登録された販売希望商標のご紹介です。登録商標や権利範囲の詳細は、『アット商標』トップページの『販売商標一覧へ』ボタンよりご確認いただけます。

 興味のある登録商標がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

<1月24日掲載>
[商標]サイバークリニック          [区分]第16,41類
【アット商標】 http://www.a-shohyo.com/


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