◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
      「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.16
                        発信日:2011年1月4日
                        発信者:加藤特許事務所
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

★ 目 次 ★
  1.所長コラム
   ●新年にあたり

 2.知財ニュース
   ●越後製菓が、切り餅特許訴訟で地裁判決を不服として知財高裁に控訴

 3.連載 知財講座
   ●第16回:マドリットプロトコルに基づく国際登録出願(マドプロ出願)

 4.イベント案内
   ●平成22年度模倣品対策説明相談会実施中

 5.事務所からのお知らせ
   ●ホームページに中国語を追加
   ●「平成22年度 福岡県中小企業外国出願支援事業」支援対象企業募集

━━━━━━━━━━━━
1.所長コラム
━━━━━━━━━━━━
●新年にあたり
  新年明けましておめでとうございます。旧年中は大変おせわになりました。本年
もどうぞよろしくお願いいたします。本年が皆様にとって、幸多き年となりますよ
う願っております。

<激変する中国事情>

 昨年末中国に行ってまいりました。北京の3つの特許事務所と清華大学、上海の
特許事務所、ジェトロ等を訪問し情報交換をしてまいりました。

 お蔭様で有力特許事務所だけでなく、知財裁判に大きな影響力を持つ法曹関係者
との人脈も形成することができ、今後皆様へのサービスに必ずや役立つものと確信
をしております。

 中国の経済的な発展については皆さんもご承知のとおりですが、特許出願件数の
急激な伸びを見過ごすわけには参りません。あと数年で、“かつて特許大国であっ
た”日本の出願件数を追い越すのではないかとの予測もあります。

 この数字が物語るように、中国企業の知的財産に関する意識が大きく変化してい
ます。その一つの要因は、政府の政策にあるようです。補助金を出すか否かの判断
を、まず、特許があるか否かに求めるようです。環境技術、エネルギー関連技術に
おいて顕著です。

 中国はものまね天国との認識はある意味本当ですが、一方で、中国国内企業同士
の知財紛争も増加しており、また中国企業の日本を含む諸外国への出願も急増して
いることから、中国および中国企業と関連のある今後のビジネス展開は、知的財産
抜きでは語れず、大いに注意が必要です。

 今回訪問した清華大学は、胡錦濤国家主席の出身校でもある国家重点大学の一つ
で、中国における工学系の最高峰ではありますが、驚いたことには、実に年間1,50
0件もの特許出願をしているとのことでした。大学の知財本部の下で、研究開発と
特許出願が一体化していると考えます。
  中国レポートにつきましては、機会をみてご報告できればと思っております。

<コンサルティングの大切さ>

 特許出願の究極的目的は、単に権利を取得することではなく、それが実際に世の
中で活用され、そのことによって特許権者である企業は経済的メリットを享受し、
また一般人はその技術の恩恵に浴することにあります。そのために良い発明を掘り
起こし、強い権利化を図り、さらには実際の事業に役立つまで高めることが必要で
す。このいずれが欠けても特許制度本来の目的を達成することができません。

 先に述べた中国事情とは対照的に今日本国内の特許出願が減少していることが話
題になっておりますが、その主な原因の一つは、多くの特許技術が実際に世の中で
活用されていないことにあると思います。特に、日本社会で圧倒的多数を占める中
小企業において、特許出願に要する費用は出願を躊躇させる大きな要因です。

 そして、その根底にあるのが、特許はコストであり、お金を産む投資ではないと
いう現実であります。これを打ち破るには、権利化された発明を実際の世の中で活
用し、企業に経済的メリットが得られるようにするしか方法はありません。

 「特許出願費用をコストから投資へ」これが、企業自身および今後の特許事務所
に課せられた使命のひとつであると私は思っています。そのために、私は、昨年か
らいわゆる知的財産コンサルティングに力を入れております。

 いま試みの一つとして手がけているのは、弊所のお客様が持っておられる「テラ
ヘルツ波放射体を製造する技術」の事業化への知的財産面でのサポートです。

 この技術は、応用物理学会が数年前に認めたように21世紀の産業の主軸になるこ
とが期待されています(※1)。この企業は、「任意の波長のテラヘルツ波を発す
る放射体を飲めるほど安全な水の形で製造できる世界に誇る技術を有する企業」で
す。 医学、生物学等のライフサイエンス、農業、食品、環境技術等幅広い技術分
野での新たな応用が検討されています。

 またこの基礎技術とほかのお客様の独自技術とのコラボレーションで、今後、世
界で唯一の新規製品、有用技術が数多く誕生していくことが期待されます。

 われわれ加藤特許事務所は、今後、単に特許や商標の出願業務をお受けするだけ
ではなく(無論これは一番大切なことです。)、知的財産権を中心とした皆様の企
業の発展に役立つさまざまなサービスを提供してまいる所存です。

 このことを通して、加藤特許事務所は、お客様に将来に対する安心を与え、お客
様とともに成長する特許事務所を目指します。

                         代表 弁理士 加藤 久

(※1)
・応用物理学会ロードマップ [http://www.jsap.or.jp/jsap75/academic_03.html]
・テラヘルツ技術の現状と展望 [http://www.ile.osaka-u.ac.jp/research/thp/pdf/oyobuturi300.pdf]

━━━━━━━━━━━━
2.知財ニュース
━━━━━━━━━━━━
●越後製菓が、切り餅特許訴訟で地裁判決を不服として知財高裁に控訴

 食品メーカーの越後製菓は、側面に切り込みを入れた「切り餅」の特許権(第41
11382号)を侵害されたとして、「サトウの切り餅」で知られる佐藤食品工業を提訴
した訴訟で、東京地裁は11月30日、特許権の侵害を認めず越後製菓の請求を棄却す
る判決を下したが、越後製菓はこの判決を不服として、12月13日知財高裁に控訴し
た。

 越後製菓の特許発明は、切り餅の側面に長手方向の切り込みを入れることで、加
熱時の内部膨張による噴き出しをコントロールするものであり、佐藤食品工業の
「サトウの切り餅」は、上下面と側面の両方に切り込みが入っている切り餅です。

 東京地裁は、越後製菓の特許発明は、「底面又は上面には切り込みを設けず、側
周表面に切り込みを設けることを意味する」ものであると解釈して、上下面と側面
の両方に切り込みのある「サトウの切り餅」は同特許権を侵害していないと判断し、
越後製菓の請求を棄却する判決を下した。

 本判決に興味のある方は、下記のURLより判決文をお読み下さい。
URL: http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101203173939.pdf

━━━━━━━━━━━━
3.連載 知財講座
━━━━━━━━━━━━
第16回:商標 - マドリットプロトコルに基づく国際登録出願(マドプロ出願)

 マドプロ出願とは、マドリッド協定議定書への加盟国が行うことのできる外国へ
の商標出願の方法です。従来、各国毎に行わなければならなかった出願手続を、1
通の出願書類を日本国特許庁(本国官庁)に提出することにより、複数の指定国に
一括して手続ができます。

 マドプロ加盟国は、現在83ヶ国(2010年10月現在)で、米国や欧州圏はもとより、
アジア圏においても、日本・中国・韓国・シンガポールなど多くの国が加盟してい
ます。
  日本では2000年の出願受付以来、年々その出願件数は増加しており、2009年は対
前年比3.6%増の1310件に達しております。
  以下、マドプロ出願のメリットと注意点についてご紹介しておきます。

<マドプロ出願のメリット>

(1)手続の簡素化:各国の出願フォーマット、各国言語で作成しなければならな
かった願書を、「英語」(日本国特許庁の場合)で1通の願書を作成すればよい。

(2)権利管理の簡素化:マドプロ出願した商標は国際事務局における国際登録簿
により一元管理されているため、各国毎に存続期間の更新や名称変更、権利移転等
の申請を行う必要がありません。

(3)経費の削減:直接出願と異なり、各国の代理人を通さないため、代理人報酬
や翻訳等の費用が不要です。
※ただし、指定国で拒絶理由が発見されこれに対し応答する場合は、当該国の代
  理人の選任が必要となり、別途費用が発生します。

(4)迅速な審査:マドプロ出願では、指定国官庁が拒絶理由を発見した場合は国
際事務局へ通報しなければなりませんが、この通報期間を1年(又は18ヶ月)以内
に制限しており、審査(拒絶)期間の制限がありますので、指定国によっては、直
接出願よりも審査が迅速に行われる場合があります。

(5)事後指定による保護の拡張:出願時に指定しなかった締結国はもとより、出
願後に新たに加盟した締結国についても、事後指定の手続により指定国の追加が可
能です。

<マドプロ出願の注意点>

(1)基礎出願又は基礎登録の必要性:マドプロ出願するためには、日本国特許庁
(本国官庁)に係属している自己の商標出願または自己の商標登録を基礎とする必
要があります。

・基礎出願または基礎登録が拒絶、放棄、無効等となった場合には、国際登録が取
り消され、指定国における国際登録の効果も失効します(セントラルアタック)。
なお、一定の条件を満たせば、指定国への直接出願に変更することができ、その
場合国際登録日に出願が行われたものとみなされます。

・マドプロ出願の商標は、上記の基礎となる出願・登録の標章と同一でなければな
りません。

・マドプロ出願で指定可能な商品及び役務は、上記の基礎出願又は基礎登録で指定
している商品及び役務と同一又はその範囲内でなければなりません。

(2)出願人:マドプロ出願することができる者は、日本国民、又は日本国内に住
所又は居所を有する外国人です。

 マドプロ出願は、このように便利な制度でもありますが、ケースによっては利用
できず、直接出願が必要となる場合もありますので、特に、外国での事業展開が予
想される場合は、日本国での商標出願に際し、その後の外国展開を見据えた商標
(標章、指定商品)を検討されることが肝要です。

━━━━━━━━━━━━
4.イベント案内
━━━━━━━━━━━━
●平成22年度模倣品対策説明相談会実施中

 特許庁は、国内外の模倣品(侵害・不正コピー商品)対策に苦慮されている方々
を支援するための一環として、本年度も各地で模倣品対策の説明会と相談会を開催
中です。
  本説明相談会では、国内外での模倣被害や権利侵害に対する個別相談に応じると
ともに、事例も取り入れた予防策と紛争解決についての説明会を同時に実施してい
ます。
  参加の場合は、事前申込みが必要です。申込み先・問合せ窓口は、(社)発明協
会で、参加は無料です。九州・沖縄での開催都市は、福岡市(開催日:2/10)、那
覇市(開催日:1/28)です。

 お申込み・詳細については、下記のWEBサイトをご覧下さい。
URL: http://www.iprsupport-jpo.jp/soudan/seminar/mohou-setsumei-soudan.html

━━━━━━━━━━━━
5.事務所からのお知らせ
━━━━━━━━━━━━
●ホームページに中国語を追加

 中国語による弊所PRスライドをホームページ(中文)に掲載いたしました。

●「平成22年度 福岡県中小企業外国出願支援事業」支援対象企業募集

 (財)福岡県中小企業振興センターは、福岡県内の中小企業社を対象に外国出願
の促進を図るため、特許・商標・意匠の外国出願に係る費用の1/2を助成(審査
あり)。応募締切日は、1月31日です。

 募集案内及び申請書等は、下記のWEBサイトをご覧下さい。
URL: http://www.joho-fukuoka.or.jp/intellectual/event/index.html

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

◆加藤特許事務所
URL:http://www.kato-pat.jp/

編集・発行: 加藤特許事務所 -メルマガ事務局-
福岡市博多区博多駅前3丁目25番21号 博多駅前ビジネスセンター411号
TEL:092-413-5378 E-mail:mail@kato-pat.jp
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆