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      「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.15
                        発信日:2010年11月1日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
  1.所長コラム
   ●万国博覧会と工業所有権に関するパリ条約

 2.知財ニュース
  ●産業財産権制度 創設125周年[客員弁理士 久保浩三氏 特許庁長官賞受賞]
  ●「第二医薬用途発明」に関する欧州特許庁拡大審判部通知について

 3.連載 知財講座
  ●第15回:特許 - 発明の単一性 

 4.事務所からのお知らせ
  ●平成22年度知的財産権制度説明会(実務者向け)開催中

 5.事務所からのお知らせ
   ●商標ポータルサイト(アット商標)のご案内

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1.所長コラム
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●万国博覧会と工業所有権に関するパリ条約

 上海万国博覧会が先月末に閉会した。出品国は日本を含め200の国や地域に及び、
世界から最先端の技術が展示され、来場者も大阪万博の入場者数6400万人を超え、
最終的な入場者は7000万人に達したとされています。

 ところで、外国に特許出願をする場合、通常はパリルートと呼ばれる「工業所有
権に関するパリ条約」に基づき優先権を主張して行うことになります。パリ条約は
1883年に締結され、現在、加盟国は173ヶ国に達しています。実は、外国への特許
出願を可能にしたこのパリ条約締結の契機は、当時世界の主要都市で開催され始め
た万国博覧会でした。

 万国博覧会(万博)の始まりは1851年のロンドンで開催された国際博覧会といわ
れています。1867年(慶応3年)の第2回パリ万博には、日本から「幕府」および
「薩摩」、「鍋島」の両藩が参加し、1873年のウイーン万博には明治政府が日本国
として初めて公式に参加をしています。展示物としては、1878年の第3回パリ万博
には、エジソンの蓄音機、自動車、冷蔵庫等が出品され、1889年の第4回パリ万博
ではフランス革命100周年を記念してエッフェル塔が建設され、エジソンの白熱電球
で夜間照明がなされたとあります。

 このように、万博の歴史は人類の「発明・発見」の歴史でもありました、それぞ
れの時代の最先端の技術や文化が集まる場となり、また、ルイ・ビィトン、エルメ
ス、ティファニー等の現在でも人気のあるブランドも万博での受賞が大きな飛躍の
契機になったと言われています。

 しかし、このような万博の開催で困ったことが生じました。当時は知的財産の保
護が各国で異なり、また保護が不十分なこともあり、出品された最先端技術、ブラ
ンド等が見学者により自国に持ち帰られて模倣されてしまうということです。

 そこで、自国のみならず他の国でも知的財産を保護する国際的な条約の締結が模
索され、1883年に工業所有権に関するパリ同盟条約が締結されるに至りました。
  パリ条約は、内国民待遇、各国特許の独立、優先権を三大原則とし、現在私達が、
国内同様に簡単に外国でも特許出願ができるのは、このパリ条約によるものです。

 当所では、皆様方の貴重な発明を母国日本はもとより、このパリ条約をはじめ、
PCTやEPC等の諸条約を活用し、世界の各国で最適な権利化を図るべく努めてまいり
ます。

                        副所長弁理士 久保山 隆

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2.知財ニュース
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●産業財産権制度 創設125周年[客員弁理士 久保 浩三氏 特許庁長官賞受賞]

 日本の産業財産権制度が、本年で創設125周年を迎えたことを記念して、天皇皇
后両陛下にご臨席たまわり、10月18日に「産業財産権制度125周年 記念式典」が
挙行されました。
  併せて、本式典において産業財産権制度の発展に功労のあった個人、企業などに
対して、平成22年度「知財功労賞」の表彰も行われ、 弊所の客員弁理士で奈良先
端科学技術大学 教授 久保 浩三 氏が特許庁長官賞を受賞しました。 詳細は、下
記のWEBサイトをご覧ください。

URL: http://news.braina.com/2010/1012/move_20101012_001____.html

 また、特許庁は、産業財産権制度125周年を記念し、この15年の変遷をまとめた
「産業財産権制度125周年記念誌~産業財産権制度この15年の歩み~」を作成・発
行しました。
  興味のある方は下記の特許庁WEB上で公開されていますので、ご覧ください。

URL: http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/seido/rekishi/125_kinenshi.htm


●「第二医薬用途発明」に関する欧州特許庁拡大審判部通知について

 欧州特許庁(EPO)は、2010年9月20付けで第二医薬用途クレームの記載要件を変更
するとの通知を公表しました。従来、欧州特許庁への公知物質の第二医薬用途発明出
願については、いわゆるスイス型クレーム(用途限定を付した"use"クレーム)の
形式で権利化を図る実務が行なわれてきました。

 この度、EPOの拡大審判部は2007年12月13日に施行されたEPC2000により、第二医薬
用途については物質クレームの形式により記載したうえで新規性・進歩性の判断を
すべき旨、審決(G2/08)を致しました。 本変更は、2011年1月29日以降が出願日(優
先日)の出願に適用されます。

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3.連載 知財講座
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第15回:特許 - 発明の単一性

 一の願書で特許出願することができる発明の範囲(発明の単一性)は特許法第37
条に定められており、要件として二以上の発明が一定の「技術的関係」を有すべき
ことが規定されております。
  この「技術的関係」の具体的要件については経済産業省令に細かく規定されてお
りますが、基本的な考え方としては、二以上の発明が同一の又は対応する「特別な
技術的特徴」を有しているかどうかで判断されます。

 「特別な技術的特徴」とは、発明の先行技術に対する貢献(即ち、先行技術との
相違点)を明示する技術的特徴をいいます。つまり「技術的特徴」が「特別」であ
るためには、この「技術的特徴」によって発明の「先行技術に対する貢献」がもた
らされるものでなければなりません。

 同一の又は対応する特別な技術的特徴が存在しないときは、発明の単一性の要件
を満たさないと判断され、拒絶理由通知を受けることになります。
  このとき、単一性の要件を満たさないと判断された請求項については審査されま
せんので、分割出願を行うか、「特別な技術的特徴」を有するように補正すること
になります。

 なお、平成18年特許法改正により、平成19年4月1日以降の出願については、特許
法第17条の2第4項のいわゆる「シフト補正の禁止」の規定が適用されます。このシ
フト補正の禁止の規定は、拒絶理由通知において特許性が判断された請求項と補正
後の請求項とが上述の単一性の要件を満たすようにしなければならないというもの
です。

 例えば、請求項1がAを構成要素とし、請求項2がA+Bを構成要素とし、請求
項3がA+Cを構成要素としていた場合に、請求項1が新規性なしと判断されると
請求項1と請求項2,3とは上述の単一性の要件を満たさないことになります。
  この場合、例外的に請求項2までは審査されることになりますが、請求項3につ
いては審査されません。

 すなわち、請求項2のみが特許性が判断された請求項となり、シフト補正の禁止
の規定により、この出願についての補正は請求項2の構成要素であるA+Bを含め
なければならなくなります。
  一方、請求項3を権利化するためには、請求項3を分割出願することが必要とな
ります。

 また、ここで一番問題となるのは、構成要素Bを追加するまでもなく、構成要素
Aを少し明確にする補正を行うことで特別な技術的特徴が明らかになりそうな場合
であっても、そのような補正は許されないということです。この場合も分割出願が
必要となります。

 このような事態を未然に防ぐためには、出願時に先行・公知文献の調査を十分に
行い、いたずらに広すぎる請求項を作成しないように注意することです。

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4.イベント案内
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●平成22年度知的財産権制度説明会(実務者向け)開催中

 特許庁は、日頃から知的財産権業務の実務に携わっている方々を対象に全国22都
市で10月から12月にかけて「知的財産権制度説明会(実務者向け)」を開催中です。
  本説明会では、特許・意匠・商標の審査基準及び運用、審判制度の運用、国際出
願の手続等について、特許庁職員が数日間かけて解説します。

 参加の場合は、事前時申込みが必要です。申込み先・問合せ窓口は、(社)発明
協会になっています。参加は無料。九州での開催都市は福岡市と北九州市で、開催
日は下記の通りです。

 福岡市:11/4,8,10,25,29  北九州市:12/2,9

お申込み方法については、下記のWEBサイトをご覧ください。
URL: http://www.jiii.or.jp/semina/h22/h22_jitsumusha/index.html

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5.事務所からのお知らせ
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●商標ポータルサイト(アット商標)のご案内

 弊所では、商標に関するサービス拡充の一環として、商標専用ポータルサイト
【アット商標(@商標)】を開設しております。当サイトでは、権利期間が残って
いるものの、更新の手続きが不要となった登録商標の売買(譲渡契約)の支援など、
新しい試みのサービスを行っております。

 また、ショッピングサイト【九州かくれもん】との提携により、アット商標をご
利用頂いた方、及び、弊所で商標出願を行っていただいたお客様につきましては、
【九州かくれもん】の利用料『年間31,500円(月額 2,625円)~』を1万円引きに
てご利用いただけます。

 興味のある方は、どうぞお気軽にお問合せください。

アット商標URL: http://www.a-shohyo.com/
九州かくれもんURL: http://www.kakuremon.com/

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◆加藤特許事務所
URL:http://www.kato-pat.jp/

編集・発行: 加藤特許事務所 -メルマガ事務局-
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