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      「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.13
                        発信日:2010年7月1日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
  1.所長コラム
   ●知らなかったでは・・・

 2.知財ニュース
   ●北海道、道産品輸出品用シンボルマーク作成、中国などで商標出願受理
   ●門司税関、偽ブランド品 差し止めの1420点公開

 3.連載 知財講座
   ●第13回:記載要件

 4.イベント案内
   ●平成22年度 知的財産権制度説明会(初心者向け)開催

 5.事務所からのお知らせ
   ●審査請求料納付繰延制度

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1.所長コラム
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●知らなかったでは・・・

 特許の世界では、ちょっとした誤解が原因で、取れるはずだった特許も取れなかっ
た、ということがよくあります。

 つい、先日のことです。あるクライアントの特許出願が特許になりました。この
発明はそのクライアントにとってもビジネス的にかなり重要なものでしたので、非
常に喜んでいただけました。ここまでは良かったのですが、この先からが今日の本
題です。

 特許を取れたことに気を良くしたそのクライアントは、今度はこの発明について
国際特許(アメリカその他の外国での特許という意味のようでした)も取りたいの
で、申請をお願いします、と依頼を受けました。日本だけではなく、世界的な視野
で特許を取ってしまいたいという積もりのようでした。

 ここまでの話で、わかる人はわかります。クライアントと何気ない話をしていて
感じることが多いのですが、特許はいつ申請してもいい、と思っている人がまだま
だ沢山います。上の話では、日本で特許を取った後で外国に出願をしようとしても、
もうその段階では遅いのです(もちろん、日本の早期審査で出願公開前に特許になっ
たというようなケースでは話は別です)。つまり、日本で出願公開が行われてから
何年も経過していますから、すでに、外国に特許出願を行うことができる時期は過
ぎてしまっているのです。

 このようなことは特許事務所にとっては常識そのものですが、そのために、特許
事務所からすれば、クライアントも当然知っていると錯覚しがちです。日本で特許
になってからでは外国出願は遅い、ということを知っているか知らないかで、外国
で特許を取れるかどうかが左右されます。原因(知っているか知らないか)に対し
て結果(もはや外国では特許を取れない)が違い過ぎます。

 こういうことを防ぐためには、やはり、日本で出願するときに、特許事務所にな
んでもかんでも話しておくことが大事です。そうすれば、特許事務所の側でも、日
本での出願のときに外国出願の注意事項も忘れずに説明することになります(上の
ケースでは中途受任だったので、どうしようもなかったわけです)。

 出願をするときでもしないときでも、何か疑問があれば、いつでも事務所までお
問い合わせ下さい。ちょっとしたことでも、将来、大きく影響することがあります。
知らなかったために将来の不利益を被るというようなことは、一本の電話で十分に
防止できます。弊所は、出願から権利化、そして権利の活用までお客様の立場に立
ち、喜んで対応させていただきます。

 副所長 弁理士 天野 広

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2.知財ニュース
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●北海道、道産品輸出品用シンボルマークを作成、中国などで商標出願受理
  北海道は6月4日、海外における道産食品の識別力を高め、北海道ブランドを保
護することを目的に「道産品輸出用シンボルマーク」を作成し、中国、香港、台湾
で商標出願が受理されたと発表した。
  受理が確認されたことから公表して、6月7日から、シンボルマークの使用管理
を委託した北海道ビジネスセンターで使用申請の受付を開始した。使用料は、無料
です。

詳細は、下記のWEBサイトをご覧ください。
URL: http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/skk/trading/symbolmark

●門司税関、偽ブランド品 差し止めの1420点公開
門司税関は6月15日、09年に差し止めた偽ブランド品の一部1420点を報道陣に公開
した。門司税関によると、09年の差し止め件数は前年比7%増の1821件(計5万5509
点)で、過去最高を記録。このうち中国から輸入されたものが9割を占め、そのう
ち、ストラップなど携帯電話の付属品が前年の6倍強と大幅に増加している。

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3.連載 知財講座
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第13回:記載要件

 特許請求の範囲(クレーム)に記載された発明が、新規性や進歩性等のいわゆる
「特許要件」を満たしていたら常に特許を受けることができるのでしょうか?

 特許を受けるためには、特許要件以外に、「記載要件」を満たす必要があります。
ここで、「記載要件」は、明細書の記載が満たさなくてはならない要件であり、
「明確性要件」、「サポート要件」および「実施可能要件」があります。ここでは、
「サポート要件」と「実施可能要件」について説明します。

 「サポート要件」は、特許請求の範囲に記載された特許を受けようとする発明が、
明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでなくてはならない、とする要件です。
  簡単にいうと、特許を受けようとする発明は、明細書によって裏付け(サポート)
されていなければならない、ということです。

 これは、自己の発明の詳細を公開した者に対して一定期間の独占の権利を認める
という特許制度の原則に由来しています。すなわち、特許請求の範囲には記載され
ているが、明細書には記載されていない発明を独占させることは、公開していない
発明に対して独占権を与える結果となり、妥当でないということです。

 一方、「実施可能要件」とは、明細書に、その技術分野の第三者(当業者)がそ
れを読んで発明を実施することができる程度に十分詳細なものであることを要求す
る要件です。

 この要件は、クレームの記載では、形式上特許要件を満たす発明でも、明細書中
に、その発明が実現できるかどうかについての記載がなかったり、また、発明の内
容を実質的に秘密にしていたりするにもかかわらず特許が与えられる事態を防ぐた
めに存在します。

 具体的には、物の発明については明細書の記載に基づいて、当業者がその物を製
造でき使用できること、方法の発明については、明細書の記載に基づいて当業者が
その方法を実行できること、が必要となります。

 なお、出願後の明細書には新規事項の追加はできませんので、出願時の明細書で
サポート要件、実施可能要件を満たすように十分に留意する必要があります。

(最近、上記2要件不備による拒絶理由が増加しています。特に、サポート要件に
ついては、パラメータ特許に関する知財高裁の大合議判決(平成17年(行ケ)11042)
以降、審査が厳しくなっており、化学、医薬分野の出願においては、出願時の充分
なデータ記載が求められています。)

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4.イベント案内
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●平成22年度 知的財産権制度説明会(初心者向け)開催
  特許庁は、7月~9月にかけて、全国47都道府県で初心者向けの知的財産権制
度説明会を開催します。これから知的財産権を学びたい方、企業等において新しく
知財部門に配属された方など幅広い方々を対象として説明会を開催します。特許・
実用新案・意匠・商標の産業財産権を中心とした知的財産権の概要や産業財産権に
関連する支援策等も紹介します。参加は事前の申込みが必要です。参加費は無料で
すので、この機会にぜひご参加ください。
九州での開催日は、福岡:7/8,9/9 、佐賀:8/3 、長崎:9/16 、熊本:9/8
          大分:7/30 、宮崎:9/3 、鹿児島:9/7

詳細は、特許庁のWEBサイトをご覧ください。
URL: http://www.jiii.or.jp/semina/h22/h22_beginner/index.html

 
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5.事務所からのお知らせ
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●審査請求料納付繰延制度
  特許庁は、景気の影響による、企業等の資金的な負担を軽減するための緊急的な
措置として、平成21年4月1日~平成23年3月31日間で、審査請求を行った
案件については、審査請求書の提出日から1年間に限り、審査請求料の納付を繰り
延べできる制度を実施しています。

 この制度について、利用を希望される場合、又はご質問がありましたらお気軽に
お問合せください。

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