◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
      「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.09
                        発信日:2009年11月4日
                        発信者:加藤特許事務所
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

★ 目 次 ★
  1.所長コラム
   ●パテントトロールと特許発明の適切な保護
  2.知財ニュース
   ●特許庁、ビジネス関連発明の最近の動向について公表
  3.連載 知財講座
   ●第9回:進歩性について
  4.イベント案内
   ●平成21年度知的財産権制度説明会(実務者向け)開催中
  5.事務所からのお知らせ
   ●登録証の発行について

━━━━━━━━━━━━
1.所長コラム
━━━━━━━━━━━━
●パテントトロールと特許発明の適切な保護

 先日、NHKのクローズアップ現代で米国のパテントトロール(Patent Troll)
の問題が採り上げられていた。ゲストに日本人で米国特許弁護士の草分けであるヘ
ンリー幸田氏が迎えられ、知的財産制度に身を置くものの一人として興味深く拝見
させて頂いた。

 パテントトロールという言葉は、Intel社の顧問弁護士であったP. Detkin氏によ
り初めて使用されたと云われ「現に発明を実施しておらず、実施する意図も無く、
多くの場合は決して実施することのない特許から多くの利益を得ようとする者」と
定義されており、最近では、そのやり方の強引さもあってパテントマフィアとも言
われています。

 テレビでは、セイコーエプソンが昨年米国の会社から訴訟を起こされたが、訴え
てきたのは何百という訴訟を起こして名高いパテントトロール会社(Acacia
Research)であったこと、そして結果的にはセイコーエプソンがAcacia の和解提示
に応じざるを得なかったことが報じられていました。

 トロール会社は、特許弁護士はもとより、会計士、心理学者、はたまた俳優まで
雇い標的会社の一番弱いところを狙い訴訟戦略を掛けてくるといわれ、米国におけ
る陪審裁判の結果予測性の困難さや高額の訴訟費用を考慮すると、長引く訴訟を続
行するか或いは不本意ながら和解に応じるか、判断が難しいところです。

 また、このような訴訟で被告企業が一番困るのは、先の定義にあるようにトロー
ル会社自身は特許を実施しておらず、被告企業がトロール会社を競合する自社特許
権の侵害で反訴できない点といわれています。

 米国では、このようなトロールによる特許裁判が行き過ぎとの声も聞かれるよう
になり、特許発明を実施していない特許権者の差止め請求の制限や裁判所における
損害賠償額の見直しがなされつつあります。

 日本でも、小泉元首相の知財立国宣言の下にプロパテント化を進めてきており、
特許の価値が従来にも増して格段と高くなりました。パテントトロールの脅威が日
本でも現実性を帯びてきています。企業は、今までと異なる次元での特許戦略、対
応が求められているといえます。

 しかし、日米を問わず一番大切なことは、特許発明に見合った特許権の価値(特
許発明のオリジナリテイ、発明者の努力に対する適切な保護)を与える制度作りで
あり、権利だけが実体を離れ声高に論じられることが無い施策が望まれます。

副所長 弁理士 久保山 隆

━━━━━━━━━━━━
2.知財ニュース
━━━━━━━━━━━━
●特許庁、ビジネス関連発明の最近の動向について公表

 特許庁は10月5日、昨年の実績データまで含めたビジネス関連発明の最近の動
向について公表しました。

 ビジネス関連発明は、米国でのビジネス方法に関する特許を巡る判決や訴訟を契
機として、日本でも2000年頃に、出願ブームともいえる状況となり、ビジネス関連
発明自体を主要な特徴とする出願が、2000年ピークで年間約1万3千件程度ありま
したが、それ以降年々減少傾向を続けており、昨年は約3千件程度でした。
  また、審査請求件数も、2001年10月以降の審査請求期間短縮の影響から、2004年
~2007年は増加しましたが、その影響が少なくなる2008年以降は減少するものとみ
られています。

 審査状況をみると、特許になる割合が、全分野の平均値約50%に対し、2003年~
2006年では8%程度と大幅に低くなりましたが、その後、2007年に約15%、2008年
に約19%となり、上昇傾向を示しています。

ビジネス関連発明の最近の動向の詳細については下記のWEBサイトをご覧ください。
URL: http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/bijinesu/biz_pat.htm

━━━━━━━━━━━━
3.連載 知財講座
━━━━━━━━━━━━
第9回:進歩性について

 進歩性とは、特許法第29条第2項に規定されており、その発明の属する技術分
野における通常の知識を有する者(当業者)が出願時の技術水準に基づき容易に発
明をすることができない程度(困難性)をいいます。

 この趣旨は、通常の技術者が容易に発明をすることができたものについて特許権
を付与することは、技術進歩に役立たないばかりでなく、かえってその妨げになる
ので、そのような発明を特許付与の対象から排除しようというものです。

 審査官は、この進歩性を判断するために、審査対象である発明が、引用発明から
の最適材料の選択あるいは設計変更や単なる寄せ集めに該当するかどうか検討した
り、引用発明の内容に動機づけとなり得るものがあるかどうかを検討します。
  また、引用発明と比較して、顕著な効果や別異の効果が明細書等の記載から明確
に把握される場合には、一般的には進歩性があるとされています。

 簡単な例を挙げれば、Aという効果が得られる公知技術XとBという効果が得ら
れる公知技術Yとがあった場合、単純にA+Bという効果を期待してX+Yという
組み合わせの発明をしたというだけでは進歩性をクリアできません。
  X+Yという組み合わせによってA+Bとは異なる新たな効果Cを見出すことが
できれば進歩性をクリアすることができます。

 実際には進歩性の判断はこれだけではなく、2つの公知技術を組み合わせる動機
付けはあるか、課題は共通しているか等、非常に複雑で難しいものですので、判断
に迷われるような場合はお気軽にご相談下さい。

━━━━━━━━━━━━
4.イベント案内
━━━━━━━━━━━━
●平成21年度知的財産権制度説明会(実務者向け)開催中

 特許庁は、10月~12月にかけて全国20都道府県で、実務者向けの知的財産権
制度説明会を開催中です。
  日頃から知的財産業務に携わっている方々などを対象にした説明会です。特許・
実用新案・意匠・商標の審査基準、審判制度の運用・手続、PCT制度の概要・実
務、先使用権制度など、その他実務上必要な諸制度について、特許庁職員が数日間
かけて説明します。

 参加の場合は、事前に申込みが必要です。申込み先・問合せ窓口は、(株)日本
旅行になっています。参加費は無料。九州での開催都市は福岡市と那覇市で、開催
日は下記の通りです。
  福岡市:11/9,17,24、12/1,17
  那覇市:11/12、12/1,8,15

詳細は、特許庁のWEBサイトをご覧ください。
URL: http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/ibento/ibento2/jitumusya.htm

なお、説明会用のテキストが、特許庁のWEBサイト上にPDFデータとして公表されて
います。
URL: http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/h21_jitsumusya_txt.htm

━━━━━━━━━━━━
5.事務所からのお知らせ
━━━━━━━━━━━━
●登録証の発行について

 出願案件が、登録(特許)査定となった場合、査定謄本の送達日から30日以内
に特許庁への登録料納付が必要です。
  登録(特許)証は、登録料納付完了後、約1ヶ月で弊所宛に発送され、その後お
客様への送付となりますので、登録(特許)証の発行をお急ぎの場合は、お早目に
納付のご指示をお願いいたします。

 なお、出願時の住所等に変更がある場合は、登録料納付の時までに変更届を提出
すれば、登録(特許)証に変更後の情報が掲載されますので、変更される場合は、
こちらもあわせてご指示下さい。
(変更手数料として、12,000円の費用が掛かります。)

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

※メールマガジン配信停止・変更方法について
配信停止:
タイトルに『配信停止』をご記入のうえ、空メールをmail@kato-pat.jp宛にお送り
下さい。
配信先変更:
タイトルに『配信先変更』と本文に変更後の名称・アドレスをご記入のうえ、
mail@kato-pat.jp宛にお送り下さい。

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

◆加藤特許事務所
URL:http://www.kato-pat.jp/

編集・発行: 加藤特許事務所 -メルマガ事務局-
福岡市博多区博多駅東1丁目11-5 アサコ博多ビル1102
TEL:092-413-5378 E-mail:mail@kato-pat.jp
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆