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      「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.07
                        発信日:2009年7月1日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
  1.所長コラム
   ●昨今の日本での特許訴訟裁判の状況について
  2.知財ニュース
   ●九州経済産業局 九州における模倣品被害の調査結果報告 
   ●米国におけるシャープとサムスンとの特許訴訟事件
  3.連載 知財講座
   ●第7回:特許 新規性について
  4.イベント案内
   ●平成21年度 特許流通講座の開催
   ●平成21年度知的財産権制度説明会(初心者向け)開催
  5.事務所からのお知らせ
   ●特許出願に関する先行技術調査の支援事業制度
   ●特許料等の減免制度

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1.所長コラム
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●昨今の日本での特許訴訟裁判の状況について
  言うまでもないことですが、日本という国は技術でメシを食っています。ヨソの
国に売るべき資源もないし、食料となる農産物が余っている訳でもありません。技
術を売って、資源やエネルギーや食料を買う・・・日本はそういうことでしか成り
立たない国です。
  その技術を守る法律という面からみると、現在のところ、特許法が一番です。新
しい技術の開発は新たな発明の誕生を伴います。その発明に対して特許を取得して、
他社の模倣から守る・・・これが特許を取ることの最大の意義であり、これ以外に
はありません。

 ところで、特許権を取得することが技術を守るうえで有効である・・・これは、
ある一つの前提が成り立たないと意味がない訳ですが、その前提とは何か、おわか
りでしょうか。
  それは、その国の裁判が有効に機能するということです。せっかく特許を取った
としても、裁判がマトモでなければ、特許は何の意味もなさない訳です。日本の近
隣の大国のように、裁判の制度はあるものの、その裁判自体が公正に行われないと
いうことであれば、そのような国で取った特許はさほど役に立ちません。

 前置きが長くなりましたが、今回の話題はその裁判です。

 ここ数年での日本の特許侵害訴訟で原告(特許権者)が勝訴した割合はどのくら
いだかご存じでしょうか。
  実に、4件に1件です。特許権者が4回裁判を起こして、ようやく1回勝てると
いう割合です。みなさんはこの数字を見てどう思われるでしょうか。もちろん、特
許権者が負けて当然というケースもあるでしょうが、ふつう特許権者は負けてモト
モトなどという裁判は起こしません。それなりに勝算があるから訴訟に踏み切る訳
です。
  それにしても、・・です。この数字を低すぎると思わない人はいないのではない
でしょうか。かなりの費用と労力と時間をかけてようやく特許を取って、その特許
を行使した結果がこの数字です。逆になってしかるべきではないでしょうか。つま
り、4件のうち2件ないしは3件は特許権者が勝訴する・・・これぐらいの数字で
あれば、別に奇異な感じはしません。

 では、4件に1件しか特許権者が勝てないことの理由は何でしょうか・・・原因
は明らかです。裁判所が超保守的であること以外に理由はありません。発明者、出
願人、特許庁が苦労して生み出した特許を裁判所がいとも簡単に潰す訳です。これ
では、マネする側からすれば、ヤリ得以外の何ものでもありません。もしかしたら、
日本もコピー天国になる日が来るかもしれません。その全責任は裁判所にあると言っ
て過言ではありません。
  まだ、あります。侵害訴訟を起こした特許の約半数が裁判所によって無効にされ
ています。約半数です。驚きを通り越して、あきれるばかりです。中には無効になっ
て当然の特許もあるでしょうが、そのような特許だけで約半数という数字にはなら
ないはずです。裁判所の保守的性質はこのようなところにも出ている訳です。

 そうは言っても、裁判所を批判するだけでは問題は解決しません。できることを
やって行くしかありません。できることは何かと言えば、かかる裁判にも耐え得る
ように明細書を充実させることが第一です。そのためには、発明者と特許事務所と
が一体となり明細書の充実に取組むことが求められます。

 当所は、顧客の皆様の発明を適切に保護するために、特許庁および知財高裁の動
向にも留意し、強く・広いクレームや明細書の作成に注力して行く所存です。

 副所長 弁理士 天野 広

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2.知財ニュース
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●九州経済産業局 九州における模倣品被害の調査結果報告
  九州経済産業局は、九州管内企業(沖縄県を除く)に対して行ったアンケート結
果(回答数332社)を基に模倣品被害状況をまとめると共に、模倣被害を受けた際の
九州管内の相談窓口機関を紹介し、かつ、企業が実際に行動を起こす際に参考とな
る他企業の対応事例を織り込んだ「九州管内の模倣品対策 早分かりガイドブック」
を作成しました。
  報告書等については、九州経済産業局のWEBサイトをご覧ください。
URL: http://www.kyushu.meti.go.jp/press/0906/090617_1.htm

●米国におけるシャープとサムスンとの特許訴訟事件
  シャープが、自社の液晶関連の米国特許を侵害されたとして、韓国サムスン電子
に対して対象製品の輸入・販売差し止めなどを求めていた件で、米国際貿易委員会
(ITC)は6月12日、サムスン電子がシャープの特許4件のすべてを侵害して
いると認定し、サムスン電子の特許侵害を認める仮決定を下しました。

 なお、ITCは今年1月、シャープがサムスンの特許2件を侵害しているとして
シャープ製の液晶テレビやノートPCなどの輸入・販売を差し止める仮決定を下し
ていましたが、6月にその差し止めが確定しました。ただ、シャープは、特許に抵
触しない製品を開発したもようで、業績への影響は小さいとみられています。

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3.連載 知財講座
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第7回:特許 新規性について
  特許制度は、新規で有用な発明をした者がその発明を公開する代償として、一定
期間その発明を独占的に実施することを認めることにより、発明を奨励すると共に、
第三者には発明利用の機会を与えて、結果的に産業の発達を図るようにしたもので
す(特許法第1条)。
  そのため、発明について特許を受けるための要件の一つとして、その発明が「新
規性」を有する必要があります。新規性を有するとは、その発明と同じものが世の
中で知られていないことであり、より詳細には、その発明が、以下の(1)~(3)
に該当しないことを意味します。

(1)世界のどこかで公然と知られていないこと
(2)世界のどこかで公然と実施されていないこと
(3)世界のどこかの新聞などの刊行物に掲載されたり、インターネットで公表さ
    れたりしていないこと

 ここで、「公然」とは、守秘義務のない者に知られてしまうことをいい、人数の
多い少ないは関係ありません。そのため、守秘義務のないたった一人の者に知られ
た場合でも「新規性なし」と判断されます。また、我が国のみならず外国で知られ
ているものも新規性がありませんのでご注意下さい。なお、昨今のインターネット
の普及に対処するため、インターネットでの公表も新規性がないと要件が変更され
ました。

 ところで、新規性の判断は、出願の時点が基準になります。そのため、たとえば、
発明の実施品を展示、発売などによって公表した後に、特許出願したとしても、
「新規性なし」とされ特許をとることはできません。そのため、特許をとるために
は、発明の実施品を展示、発売などによって公表する前に、特許出願をしなければ
なりません。

 なお、発明者が、自ら発明を「公然」と知られた状態にした場合等については、
一定の要件のもと、「新規性の喪失の例外」の措置が適用されることがあります。
詳しくは当所までお伺い下さい。
 
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4.イベント案内
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●平成21年度 特許流通講座の開催
  独立行政法人工業所有権情報・研修館は、特許流通、技術移転に携わる意思のあ
る方や興味のある方など対象に、特許流通、技術移転に関する基礎的な知識を習得
することを目的とした『特許流通講座』を実施します。現在、九州で開催が予定さ
れているところは、福岡市(開催日:7月8日(水))の1箇所だけです。受講料
は無料です。

詳細は、下記のWEBサイトをご覧下さい。
URL: http://www.ryutu.inpit.go.jp/training/index.html

●平成21年度知的財産権制度説明会(初心者向け)開催
  特許庁は、7月~9月にかけて、全国47都道府県で初心者向けの知的財産権制度
説明会を開催します。知的財産権をこれから学びたい、興味がある方、又は企業等
の知財部門の新人などを対象にした説明会です。特許・実用新案・意匠・商標権制
度の概要(産業財産権関連支援策の概要等を含む)について、特許庁産業財産権専
門官が3~4時間の講義を行います。参加には事前の申込みが必要で、申込み先は、
トムソン・ロイタープロフェッショナル株式会社です。参加費は無料です。
  九州での開催日は、福岡:7/13,9/1、佐賀:7/14、長崎 :9/16、熊本:9/14
           大分:7/28、  宮崎:7/30、鹿児島:9/10、沖縄:9/8

詳細は、特許庁のWEBサイトをご覧下さい。
URL: http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/ibento/ibento2/beginner.htm

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5.事務所からのお知らせ
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●特許出願に関する先行技術調査の支援事業制度
  中小企業・個人の方の特許出願について、特許庁から委託を受けた民間調査機関
が無料で先行技術調査を行います。審査請求を行うか否かの判断の参考にご活用い
ただけます。

詳細は、特許庁のWEBサイトをご覧下さい。
URL: http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/chushou/senkou_chousa.htm

●特許料等の減免制度
  資力に乏しい個人・法人、研究開発型中小企業及び大学の研究者等を対象に、特
許庁に納付する印紙代(特許料、審査請求料)の免除・軽減・猶予の措置が要件に
応じて適用されます。

詳細は、特許庁のWEBサイトをご覧下さい。
URL: http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/tetuzuki/ryoukin/genmensochi.htm

 これらの制度の利用を希望される場合、又はご質問がありましたらお気軽にお問
合せください。

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