◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
      「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.02
                        発信日:2008年9月1日
                        発信者:加藤特許事務所
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

★ 目 次 ★
  1.所長コラム
   ●AIPPI日・中・韓三極会議で思うこと
  2.知財ニュース
   ●特許庁検討開始 「におい、動き、音など」を商標に e
   ●日本電産 特許侵害でサムソングループを提訴
  3.連載 知財講座
   ●第2回:商標 登録要件について
  4.イベント案内
   ●特許ビジネス市inふくおか「ものづくり技術」シーズ募集
   ●平成20年度知的財産権制度説明会(実務者向け)開催
  5.事務所からのお知らせ
   ●欧州特許に関する資料提供
   ●国際出願後の詐欺的な通知に関するご注意

━━━━━━━━━━━━
1.所長コラム
━━━━━━━━━━━━
●AIPPI日・中・韓三極会議で思うこと
  先の7月4日から6日にかけ国際知的財産保護協会(AIPPI)の日・中・韓三極
会議が当地福岡で開催され、知的財産にかかわる三極のメンバーにより各国の最近
の法改正や実務の動向、特許権・商標権侵害における損害賠償額等につき報告がな
され、フロアーも巻き込んだ活発な議論が行われました。また、レセプションには
元特許庁長官の麻生知事も参加され、博多は丁度祇園山笠の最中ということもあり、
大いに盛り上がった会議となりました。小職は、地元での開催ということもあり初
めてこの三極会議に参加したのですが、当日配布された参加メンバー表をみて驚き
ました。事務局も含めた133名の参加者のなかで、中国から44名そして韓国か
ら32名の参加者があったことです。つまり、大半の参加者は日本のメンバーだろ
うとの小職の憶測に反し、何と日本メンバー50名に匹敵する中国、そして韓国か
らのメンバーの参加があったということです。これほどに日、中、韓三国が近く、
また知的財産に対する三極間の問題意識が高いとは思っていなかっただけに、本会
議は小職のこれまでの認識を一変するものでした。考えてみれば、福岡はアジアへ
の玄関といわれ、福岡―東京の距離は、福岡―上海とほぼ同じであり、福岡―大阪
の距離は、福岡-ソウルとほぼ同じであるわけです。福岡は両国の首都と近く、ビ
ジネス上の往来もそれだけ活発であり、また、ビジネスに直接関係する知的財産も
同様に活発であるべきということを改めて感じた会議でした。
  福岡を本拠地とする弊所としては、今後大いに発展が期待され、我が国との連携
が益々深まる隣国の中国・韓国、そして台湾等の東南アジア諸国の知的財産に関す
る情報をきちんと皆様に提供していきたいと思っております。

**************

 昨年度の日本から中国、韓国への製品輸出金額は約19兆円と米国への約17兆
円を上回り、日本の中国、韓国からの製品輸入金額は約18兆円と米国からの約8
兆円を遥かに上回っています。また、知的財産においても昨年度の中国の特許出願
件数は24.5万件、韓国は17.1万件であり、特に中国の出願件数の増加は前
年比16.5%の大幅なものとなっています。

副所長 弁理士 久保山 隆

━━━━━━━━━━━━
2.知財ニュース
━━━━━━━━━━━━
●「におい、動き、音など」を商標に 特許庁検討開始
  特許庁は、7月末にワーキンググループを設置し、「におい、動き、音など」の
新しいタイプの商標を導入するための検討に入った。インターネットの急速な普及
等に伴い、企業の販売・広告活動において、自社と他社の製品やサービスを区別す
る方法が多様化してきており、動きや音などの新しいタイプの商標の必要性が求め
られるようになってきているためである。今後、この新しいタイプの商標を取り入
れた商標改正は、2年後を目指し検討を重ねていく予定である。

●日本電産 特許侵害でサムソングループのサムスン・エレクトロ・メカニクスを
提訴
  小型モーター大手の日本電産は、7月30日、スピンドルモータに関する3件の
日本特許(第 3344913号、第3502266号、第3688015号)で、韓国のサムスン・エレ
クトロ・メカニクス(SEMCO)を、大阪地裁に提訴した。
  日本電産は、国内で販売されているCD、DVD等に内蔵されているSEMCO
製のスピンドルモータが、自社の特許権を侵害したとして、日本での販売差止めや
損害賠償を求めている。

━━━━━━━━━━━━
3.連載 知財講座
━━━━━━━━━━━━
第2回:商標 登録要件について

 「商標は、企業・商品の顔」といわれています。皆様が多数の商品やサービスの
中から希望とするものを選択する場合、その商品やサービスについている商標が、
選択の要素として大きな役割を果たしていると思います。従いまして、商標は、製
造業のみならず金融業、運送業など全て事業者にとって非常に大切な知的財産なの
です。今回から、定期的に商標について、説明していきたいと考えております。

 今回は、商標の登録要件についてご説明します。

 商標は、商品またはサービス(役務)の内容などを示す方が、お客さまにとって
は理解しやすいものですが、次に挙げるものは商標として登録できません。
  1つ目は、普通名称を普通に用いられる方法で表示したものは、商標として登録
することができません。例えば、もし商品「缶コーヒー」に、明朝体やゴシック体
の文字「コーヒー」を商標として登録できてしまうと、他のコーヒーメーカーは、
缶コーヒーに「コーヒー」と付けて販売できなくなるなどの弊害が生じるからです。
この例では、普通名称をズバリ名付けたものですから登録できないことは明らかで
す。
  2つ目は、「産地」、「販売地」、「原材料」、「効能」、「用途」、「数量」、
「形状」、「価格」、「生産の方法」、「使用の方法」、「時期」又は「提供の場
所」などを普通に用いられる方法で表示したものも、商標として登録することがで
きません。特に、産地や販売地等の表示は、商品取引を行う者が広く一般的に使用
するものであるので、このような表示を商品に付けると、他社の同じ内容の商品と
の区別がつきません。また、普通名称の場合と同様に、一人の権利者に独占させて
しまうと、他人が使えなくなるという弊害が生じるからです。

 そこで問題です。商品「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」に「アミノ酸酵
母」の名前で出願した場合、登録となると思いますか。

 基本的に考えれば、アミノ酸と酵母が配合された「せっけん類,歯磨き,化粧品,
香料類」であるから、商標「アミノ酸酵母」は「原材料」を表すものとして登録は
厳しいと思われます。
  実際、審査においては拒絶査定となりました。しかし、その後、審判(審査の上
級審)に持ち込み、以下のように判断され、逆転して登録を勝ち取りました。
  ******
  「アミノ酸酵母」が、品質等を直接的かつ具体的に表示するものとして、一般に
理解されるとも認め難いものであり、職権をもって調査するも、「アミノ酸酵母」
の文字が、その指定商品を取り扱う業界において、商品の品質等を表示するものと
して、取引上普通に使用されている事実も発見し得なかった、という理由です。
  ******
  このように、自他識別力の判断は、審査官や審判官の主観に左右される部分もあ
り、このような組み合わせで、実際に使用されている事実がなければ造語として登
録される可能性があり、実に微妙な問題といえます。
  気に入った名前で他に代え難い場合には、出願にチャレンジされてみるのもよい
かもしれません。先ずはご相談ください。

※本メルマガでは、特許および商標について、皆様に是非理解して頂きたい基礎的
な項目をシリーズで掲載しております。

━━━━━━━━━━━━
4.イベント案内
━━━━━━━━━━━━
●特許ビジネス市inふくおか「ものづくり技術」シーズ募集中
  来年2月12日 福岡県中小企業振興センタービルで開催される「特許ビジネス市
inふくおか」は、保有する特許技術シーズを当日会場で発表し、当日の参加者(銀
行、証券会社、知財支援事業者等)から、当該技術のライセンス、共同研究、商品
の販売協力等、各種連携の申し出を募る場です。ただ今、当日会場で発表していた
だく「ものづくりに関する特許技術シーズ」を募集中です。応募の問合せ窓口は、
福岡県知的所有権センターで、応募締切は、2008年10月10日です。

詳細は、福岡県. 知的所有権センターのWEBサイトをご覧ください。
URL:http://www.joho-fukuoka.or.jp/intellectual/event/index.html

●平成20年度知的財産権制度説明会(実務者向け)開催
特許庁は、10月~11月にかけて全国16都市で、実務者向けの知的財産権制度説
明会を開催します。日頃から知的財産業務に携わっている方、知財を経営に活かし
たいと思っている方、知的財産権制度を学んでいる方などを対象にした説明会です。
特許・実用新案・意匠・商標の審査基準、審判制度の運用・手続、PCT制度の概
要・実務、先使用権制度など、その他実務上必要な諸制度について、数日間かけて
説明する予定です。参加の場合は、事前に申込みが必要で、申込み先・問合せ窓口
は、各都道府県の発明協会。参加費は無料。九州での開催都市は福岡市と那覇市で、
開催日は福岡市:11/11,25、12/2,11,16、那覇市:11/17,27、12/4,11となっていま
す。

詳細は、特許庁のWEBサイトをご覧ください。
URL: http://www.jiii.or.jp/H20_shibu_setsumeikai/H20_jitsumusyasetsumei/h20_chizai_jitsumu.html

━━━━━━━━━━━━
5.事務所からのお知らせ
━━━━━━━━━━━━
●欧州特許に関する資料提供
  先日、ドイツのカイザー弁理士(Dr.Kaiser: Winter・Brandl・Furniss・Hubner・
Ross・Kaiser・Polte特許事務所)が弊所を訪問され、昨年発効したEPC2000に基づ
く出願状況やこの5月に発効したばかりのLondon Agreementについて説明を受けま
した。そのときに使用されたPower Point資料を、カイザー弁理士の了解のもとに
提供させて頂きますので、ご興味のある方は申し出てください。

●国際出願後の詐欺的な通知に関するご注意
  特許協力条約(PCT)及びマドリッド協定議定書(マドプロ)ルートの出願人、
名義人宛に、公的機関を装った者や無関係の者から、手数料の支払いを求める文書
が送付されるケースが頻発しております。
  出所不明の文書や、条約に規定のない支払いを求める文書が届きましたら、弊所
へご一報下さい。適切な対処方法をアドバイスいたします。

現在確認されている詐欺的な通知文書のタイトル
・IBIP - International Bureau for Intellectual Property
・ODM - Patent Trademark Register
・IBFTPR - International Bureau for Federated Trademark & Patent Register
・CPTD - Central Patent & Trademark Database
etc.

その他、詳細は特許庁のWEBサイトで確認できます。
URL: http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/jyouyaku_sosiki_igai.htm

文書のサンプルはこちら
URL: http://www.wipo.int/pct/en/warning/pct_warning.htm

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

※メールマガジンの配信停止・配信先変更について
配信停止:
タイトルに『配信停止』をご記入のうえ、空メールをmail@mail@kato-pat.jp宛にお送
り下さい。
配信先変更:
タイトルに『配信先変更』と本文に変更後の名称・アドレスをご記入のうえ、
mail@kato-pat.jp宛にお送り下さい。

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

◆加藤特許事務所
  URL:http://www.kato-pa.jp/

編集・発行: 加藤特許事務所 -メルマガ事務局-
福岡市博多区博多駅東1丁目11-5 アサコ博多ビル1102
TEL:092-413-5378 E-mail:mail@kato-pat.jp
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆